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 男性は○○が苦手、女性は○○が得意――。男女で得意分野が異なる「男性脳・女性脳」という言説を、一度は耳にしたことがあるだろう。だが実は、科学的根拠がない。考え方のアップデートが必要だ。AERA 2023年8月28日号から。

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 男性脳・女性脳言説は多くの場合、決して男女間の差別や対立をあおるような意図をもって論ぜられるわけではない。

「脳の男女差を理解すればコミュニケーションが円滑になる」

「脳の構造に起因する男女差を生かして、それぞれの得意分野にあった環境を用意したほうが、生産性が上がる」

 そんな「狙い」が背景にある。女性活躍や女性登用を目的とした企業研修などでも、男性脳・女性脳が持ち出されることは多い。しかし、男性脳・女性脳言説に根拠らしい根拠はない。そして、男女の性別役割分担を強化する懸念が大きい。

 臨床心理士で脳の多様性尊重(ニューロダイバーシティ)を推進するプログラム作りなどを担うNeurodiversity at Work代表の村中直人さんもこう指摘する。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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