漢字があふれるラオスの国境の町
大西教授は中国とラオスの国境の町ボーテンで下車した。ラオス北部のルアンナムター県ボーテンは、中国側の通関とラオス側の通関の間に位置する特殊地帯だが、このボーテンの町の特色についてこう語っている。
「ラオス側でありながらも住民の99%が中国人であり、町には漢字があふれています。中国資本のマンションが続々と建設され、そのマンションを買うのも住むのも中国人です。売春宿なども何軒かありました」
ボーテンの町では建設中のマンションがあちこちにある。将来の需要を見越した不動産への投資と開発は中国人の得意とするところであり、これまでも大陸の諸都市で繰り返されてきた。そしてここボーテンでも同じような都市開発が進んでいる。
大西教授の先のコメントは、筆者が2018年に訪れたベトナムと中国の国境の町モンカイを思い起こさせた(詳細は『中国「一帯一路」の裏の顔は官民挙げた不動産バブルの輸出だ』2018年7月27日)。ベトナム北部のクアンニン省モンカイの、国境ゲート前の一等地は中国資本による「中国商品城」が立地し、また、ショッピングセンターを中心に、住宅やホテルを建設するという巨大な不動産開発が進められていたのである。
また、モンカイにも中国製品があふれていた。交易拠点となる国境ゲート周辺では、靴、帽子、バッグ、Tシャツ、自転車、子供服、オーディオ製品などの衣類、雑貨、家電製品が販売され、そのほとんどすべてが中国製だった。
こうした商品の販売は間口一間ほどの区分された店舗で行われていたが、それらが入居する雑居ビルも、それを仲介する業者も中国系だった。また、市場や個人商店などで欲しがられたのは、ベトナムの通貨「ドン」ではなく「人民元」だった。ラオスでも同じ状況で、大西教授によれば「ボーテンは99%が中国人なので、ほぼ全面的に人民元が使われています」という。
中国と国境を接するラオスやベトナムの北部は、すでに中国経済の影響下にあることがわかるが、これはインドシナ半島における勢力図を大きく塗り替えることになるのだろうか。