上半期ブレイク芸人1位に輝いたお笑い芸人のやす子
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 オリコンニュースが発表した「2023年 上半期ブレイク芸人ランキング」で、自衛隊芸人のやす子が1位に輝いた。前年の年間ランキングでも4位に入っていた彼女が、今回はついにトップに躍り出た。

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 やす子がテレビに出るようになった最初のきっかけは、2021年の『おもしろ荘』(日本テレビ)に出演したことだろう。ここでその特異なキャラクターが注目され、少しずつテレビの仕事が増え始めた。その後、現在に至るまで勢いが衰えることはなく、順調に活躍を続けている。

 やす子がここまで引っ張りだこになっている理由は、多くの視聴者にとって魅力的なキャラクターを備えているからだろう。その魅力の本質を掘り下げると、明るさ、素直さ、体力の3点に行き着く。

 底抜けに明るくてまっすぐなやす子は、ドッキリ系の企画に最適な人材である。ドッキリ番組はいまや新人バラエティタレントの登竜門のようなところがある。そこで面白いリアクションを見せることができれば、ほかのジャンルの仕事もどんどん増えていく。

 やす子は何事にも疑いを持たず、企画に対して本気で取り組むので、ドッキリのための「フリ」を自然に作ってくれる。そして、いざ驚かされたりしたときのリアクションも屈託がなくて面白い。

 リアクションが痛々しかったり、だまされたという負の感情がにじみ出ていたりすると、視聴者としてはかわいそうに見えて笑えなくなったりする。やす子ならその心配はない。

 また、自衛官として過酷な訓練を経験してきたやす子には無尽蔵の体力と根性があるので、体を張った過酷なロケ企画にも向いている。どんなにハードな課題を与えられても、彼女はそれに全力で取り組むことができるし、当たり前のように成果を出す。そこに悲壮感は一切ない。

 今どきのバラエティ番組では、体を張るような企画を行うのにも何かと気を使う。出演者が露骨に痛がったり苦しんだりするようなことはなかなかできなくなっている。その点、やす子ならば少々のことでは音を上げないので、かわいそうな感じに見えない。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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