「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
* * *
地球温暖化による異常気象で農作物の収穫量が減ったり、鳥インフルエンザの流行で卵の価格が高騰したり。近年は私たちの「食」をめぐって、さまざまな課題が浮かび上がってきています。そんな中、手元に届く食べ物は大事にいただく。そんな姿勢があらためて重要になっています。
ローソンでは、食品ロス削減に向けた取り組みとして、余剰食材を具材に使用した「手巻寿司漬まぐろ」を6月に販売しました。また、7月25日からは余剰食材を使った「手巻寿司サーモンたたき」を関東の店舗で、「手巻寿司いか明太」を北海道・東北・中部・近畿・中四国・九州の店舗で販売しています。ほか、関東甲信越地区では7月30日の土用の丑の日に合わせて、規格外のサーモンの切り落としや余剰食材となった穴子や海老などを使用した「もったいない!ちらし寿司 穴子・刻みうなぎのせ」の予約販売も実施しました。
余剰食材も大切に使う。こういう姿勢は、本来は私たちの家庭の中で昔からごく当たり前にあるものですよね。「お米一粒にも魂が宿る」という言い伝えもあります。
でも、「無駄なく」という思いを忘れてしまいがち。私たち提供する側も、とにかく「きれいな形のもの」を提供しようとしてしまう。
その観点から現場のことを考えてみると、まだおいしく利用できるさまざまな食材が廃棄されている現状に気づきます。「もったいない」の精神を、提供する側がいまいちど見直すことが大事なのではないかと痛感しています。
一方、お客様の側では、余剰食材をうまく使った商品について非常にポジティブに受け止めていただいている方が多いなと感じます。
食品を提供する過程で「もったいないものが出ることはもうありません」。こう言えるような世界を目指していきたいと考えています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2023年8月7日号