南部軍管区司令部を後にするワグネル創設者のプリゴジン氏=ロシア南部ロストフナドヌー、6月24日(ロイター/アフロ)
南部軍管区司令部を後にするワグネル創設者のプリゴジン氏=ロシア南部ロストフナドヌー、6月24日(ロイター/アフロ)
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 ワグネルを率いるプリゴジン氏の反乱は、世界に衝撃を与えた。プーチン氏に反旗を翻したプリゴジン氏はどんな人物で、プーチン氏とどのような関係なのか。AERA 2023年7月17日号の記事を紹介する。

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 ロシアで本来は違法とされている民間軍事会社ワグネルの創設者で、6月の反乱を首謀したプリゴジン氏について、プーチン大統領はこれまで公の場ではほとんど語ったことがない。


 数少ない例外が、2018年3月に米テレビ局NBCが行ったインタビューだ。


 このインタビューの直前、プリゴジン氏は16年の米大統領選でドナルド・トランプ氏への支持を誘導するためのネット工作を行ったとして、特別検察官から起訴されていた。


 インタビュアーが尋ねた。


「あなたの親友が告発されています。エフゲニー・プリゴジン。彼を知っていますか?」


 プーチン氏は答えた。


「私はその人物を知っているが、友人のリストには入っていない」


「彼は外食産業やそのほかの事業に従事しているが、国家官僚ではないので、我々とはなんの関係もない」(傍点は筆者による)


 プーチン氏は18年12月の記者会見では、ワグネルについて問われて答えている。


「ロシアの法律に違反していないのであれば、彼らは世界のどこでもビジネスを展開し、利益を追求する権利がある」


 プリゴジン氏は私人で、ワグネルは私企業。自分とも政府とも一切関係ない、というのがプーチン氏の一貫した主張だ。


 もちろんこれは、事実とはかけ離れたでまかせだ。


■あだ名の由来


 プーチン氏とプリゴジン氏の関係は、プーチン氏が大統領に就任する前の1990年代にさかのぼる。


 プーチン氏と同じくロシア第2の都市サンクトペテルブルク出身のプリゴジン氏は90年、この地にホットドッグの販売店を開き、大成功を収める。


 90年といえば、モスクワでソ連におけるマクドナルドの1号店がオープンし、多くの市民が詰めかけた年だ。

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