ボゴール宮殿で植樹式に臨む天皇、皇后両陛下とジョコ大統領ご夫妻
ボゴール宮殿で植樹式に臨む天皇、皇后両陛下とジョコ大統領ご夫妻

 今回の訪問に様々な準備をされてきたことからも、余裕が自然と表情にも表れたのだろう。

雅子さまに限らず、一般的にも余裕のある状態に自分を整えておくということは大事ですよね。初めてだったり、久しぶりだったりする訪問先というのは誰でも緊張しますし、どのように振舞ったらいいかわからないものです。どうしたらいいかわからないときの振る舞いは見様見真似になるもので、そこには相手に対する気持ちが入らないものです。雅子さまはそういった意味でも、準備だったり、所作だったりが備わっていたからこそ、心を込めた対応ができたのではないかと思います」(西出さん)

 マナーのプロである西出さんは、雅子さまの「ある所作」を見逃さなかったという。

「マナーの観点から素晴らしい所作と感じたのが、インドネシアの首都・ジャカルタ近郊のスカルノハッタ空港で車に乗り込むときです。握手をする場合、立場が上だったり、女性の方から手を差し伸べるのですが、雅子さまはそれを自然とおこなっていらっしゃいました。お立場上、当然の所作だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の挨拶は握手よりもお辞儀がほとんどです。日本の場合、奥ゆかしさが先行し、海外に行ったときに、頭では分かっていても自分から手を出し握手するというのがなかなか自然にやりづらいところがあります。雅子さまは、このようなことを熟知されていることに加えて海外での生活や外交官というご経験も相まって、自然に堂々と先に手を差し出されて握手をなさっていらっしゃいました。その握手はとてもスムーズで、所作も姿勢も別格の美しさでした」(西出さん)

 日本の挨拶はおじぎだったりするため、握手や、ましてやハグなどはなかなか自然にというのは難しい。握手のとき以外の手の所作も西出さんは見逃さなかった。

「工業高校で雅子さまが天皇陛下と共に学生の方にご質問なさっていたとき、ロボットを手で示された場面がありました。手で何かものや方向などを示すときに、相手側から離れた手で指し示します。例えば、お話している相手が自分の左側に立っていたら右手で示すことになります。雅子さまはこのときも、自然にお優しい表情で作品を指し示され、心のこもった所作でした。見ている側が自然だと感じる所作はそれを型として覚えるだけではなく、なぜそうするのかなどの理由を理解し、相手への配慮から心を込めた所作となります。雅子さまはカリバタ英雄墓地ご訪問の前日に、天皇陛下と共に元残留日本兵の子孫の方たちと懇談なさった際に『明日は心を込めて供花させていただきたいと思います』とおっしゃいました。改めて雅子さまは心、気持ちを大切になさり、それを所作、形として表してくださることに感動いたしました」(西出さん)

 そうした所作が自然に出てくることから、生き生きとした雅子さまの笑顔も弾ける。その笑顔はまさに国際親善の交流に欠かせないものだと感じた。(AERA dot.編集部・太田裕子)

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