遺産の分け方をめぐりトラブルが起こりやすい相続。そのうえ、遺族には数多くの煩雑な手続きが遺族を待ち受けている。特に厄介なのは、デジタル絡みのものだ。AERA 2023年5月22日号の記事を紹介する。
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相続問題と言えば、かつては富裕層だけの“悩みのタネ”だった。しかし、2015年から改正相続税法が施行されたのを機に、ごく一般的な家庭でも他人事ではなくなっている。なぜなら、この改正で「相続税の基礎控除額」が引き下げられたからだ。
基礎控除とは、相続税を計算する際に用いられる非課税枠のことだ。課税対象となる資産の査定価格から、控除額を差し引いて相続税が計算される。従来は「5千万円+1千万円×法定相続人の数」であったのに対し、改正後は「3千万円+600万円×法定相続人の数」になっている。
こうして非課税枠が縮小すれば、相続税の課税対象者はおのずと拡大する。国税庁の調査によれば、21年に亡くなった人(被相続人)が143万9856人であったのに対し、相続税の申告を行った人は13万4275人。申告が義務づけられるのは、基礎控除を超える相続財産があった場合だ。つまり、全体の1割弱において相続税が発生した計算になる。
「東京都内に限れば、約6人に1人程度の割合で相続税の申告が必要となっているのが実情です。都内に不動産を所有し、多少の金融資産を蓄えているという人なら、相続税の申告が必要となってくる可能性が十分に考えられるでしょう」
■トラブルの火種
こう指摘するのは、相続税に詳しい税理士法人チェスター東京本店代表の河合厚さんだ。前述の計算式から推察できるように、法定相続人が少ないほど非課税枠も小さくなる。祖父母や父母が他界しており、子どもは1人だけといったパターンが典型例だ。また、すでに父から妻や子への相続が発生した際に「相続税の配偶者控除」をフル活用した場合も、二次相続(妻から子へのバトンタッチ)で税金が課される可能性が高くなる。