『2001年の日本』(朝日新聞社刊)
『2001年の日本』(朝日新聞社刊)
この記事の写真をすべて見る
※イメージ写真
※イメージ写真

 いつの時代も人々は未来を予測してきた。江戸時代も明治時代も、そして今も。その多くは、「こうなったらいいな」「こういう未来が来るはず」といった観測的希望と言える。パーソナルコンピューターの祖、アラン・ケイはこう言っている。「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」と。

 1969年に発行された『2001年の日本』(加藤秀俊・真鍋博・朝日新聞社共同編集)では、各業界の専門家が32年後の日本の未来を予測している。当時の希望的観測は、現在どれだけ実現されているだろうか。

■「町中暖房」――電気
 1日の電気使用量が当時の100倍になると予測されている。そして、部屋ごとを冷暖房するのではなく、街一体を冷暖房する「町中暖房」が実現するだろうと記載されている。スマートシティーに近い考えと言えるだろう。

■東京-大阪間が1時間強――鉄道
 新幹線に代わり、リニアモーターカーが主役の座になると予測されている。東海道第二新幹線が開発され、東京-大阪間を1時間強で結ぶとしている。これは、現在でもまだ実現はされていないが、予測自体は間違っていないと言える。

■「東海道メガロポリス」――農業
 アメリカのメガロポリス(いくつかの都市が帯状に連なり、機能を集中させて巨大都市を形成する地域)に触発され、「東海道メガロポリス」を思い描く。21世紀の日本は国土全体の経済活動が、アメリカのメガロポリス並みになるだろうと。ただし、食料自給率は世界で最も低い国として、世界の平和を望まざるを得ないだろうとしている。食料自給率の低さは当たっているだろう。

 当時、希望的観測として予測されていたことは、おおむね実現されていると言えるのではないだろうか。イラストは、SF小説の挿絵や小説のカバーなどを手掛けたイラストレーター真鍋博。彼が描く未来像が、それほど古さを感じさせないところがすごい。