気象庁が12日に発表したエルニーニョ監視速報によりますと、今後、夏までの間にエルニーニョ現象が発生する可能性が高い(80 %)と予測しています。過去、エルニーニョ現象発生時には冷夏や甚大な大雨災害が発生したことがあります。
エルニーニョ現象発生か
気象庁が12日に発表したエルニーニョ監視速報によりますと、4 月の太平洋赤道域の海洋と大気の状態は、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態と見られますが、エルニーニョ現象の発生に近づいているとのことです。今後、夏までの間にエルニーニョ現象が発生する可能性が高い(80 %)と予測しています。また、上の図のように、エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差は1.5℃~3℃ほどとなる予想で、顕著なエルニーニョ現象となる可能性があります。
エルニーニョ現象とは?
エルニーニョ現象が発生するのは、太平洋赤道域です。このあたりは貿易風と呼ばれる東風が吹いているため、通常、暖かい海水は西側のインドネシア付近に吹き寄せられる一方、東側の南米沖では、海の深い所から冷たい海水がわき上がっています。
ただ、何らかの原因で東風が弱まると、西側の暖かい海水が東側へ広がるとともに、東側にわき上がる冷たい海水の勢いが弱まり、南米沖の海面水温が通常より高くなります。このように、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象をエルニーニョ現象と呼びます。
エルニーニョ現象は海で起こる現象ですが、発生すると大気にも影響を及ぼし、世界各地で気圧配置などがいつもとは違った状態になります。雨や雪の降りやすい場所や、風の吹き方、気温などが変わってくるのです。
エルニーニョ現象発生時の日本の天候は?
エルニーニョ現象発生時の日本の夏は、冷夏になりやすいと言われています。
上の図はエルニーニョ現象発生時の夏(6月~8月)の天候の特徴です(気象庁調べ)。平均気温は、特に西日本で低い傾向で、北日本でも並みか低い傾向にあります。また、降水量は西日本日本海側で多い傾向にあります。
最近のエルニーニョ現象発生時 冷夏や甚大な大雨災害も
最近発生したエルニーニョ現象で、月平均海面水温の基準値との差が大きかった時を振り返ってみます。
【2014年夏~2016年春(月平均の差の最大値は+3.0℃)】
・2014年の夏は、西日本は2003年以来11年ぶりの冷夏となりました。また、「平成26年8月豪雨」が発生。7月30日から8月26日にかけて、台風12号が接近し、台風11号が上陸するとともに、前線が日本付近に停滞し、四国をはじめとして各地で大雨となり、広島県広島市では集中豪雨による大規模な土砂災害が発生しました。
・2015年の夏は、西日本で前線や台風、南からの湿った気流の影響を受けやすかったため、太平洋側を中心に降水量が多く、日照時間が少なくなりました。このため、夏の平均気温は低く、2年連続の冷夏となりました。また、「平成27年9月関東・東北豪雨」が発生。台風17号と18号の接近により、関東や東北では記録的な大雨となり、河川の氾濫など甚大な災害が発生しました。
この時のエルニーニョ現象発生時は冷夏となったり、甚大な大雨災害が発生したりしました。
今年もそろそろ大雨シーズン
11日に日本気象協会が発表した「梅雨入り予想」では、梅雨前線の北上は平年と同様か遅い傾向で、今年の梅雨入りは、沖縄・奄美は平年より遅く、九州から東北は平年並みとなる見込みです。6月には本州付近も続々と梅雨入りとなる予想で、大雨シーズンを迎えます。
最新の3か月予報では、7月には暖かく湿った空気が流れ込みやすく、本州付近で梅雨前線の活動が活発になりやすい見込みで、梅雨末期の大雨に警戒が必要になりそうです。
また、夏に発生が予想されるエルニーニョ現象の影響で、盛夏に「梅雨の戻り」のような天気となる可能性が考えられます。梅雨明け後も、局地的な大雨や日照不足などに注意が必要です。
大雨シーズンを前に、今一度ハザードマップの確認をするなど大雨への備えをしておくと良いでしょう。