本書『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』の著者・池谷孝司さんは、メディアで報道されるのは氷山の一角、ほとんどの被害者が泣き寝入りせざるを得ない状況に置かれていると指摘しています。



 一例を挙げると、本書に登場する元小学校教諭は、教え子を1人の女性として愛し、対等な恋愛関係にあったと主張します。たしかに、生徒と先生の恋愛は、ドラマや漫画の格好の題材でもあり、生徒が教師に憧れや好意を持つのは往々にあること。また、教え子の卒業を待って結婚する、という"美談"も少なからず耳にした方も多いのではないでしょうか。



 しかし、仮に双方同意の上だとしても、教え子との恋愛は教師による「権力の乱用」という側面を併せ持ちます。教師は教え子への成績を評価する立場にあり、大人と未成年ではノーを伝えるのも難しいのが現状。実際に被害を受けた児童は「逆らうとどうなるかわからないから従った」と訴えています。



 本書にも登場する「特定非営利活動法人 スクール・セクシュアル・ハラスメント防止関東ネットワーク」代表の入江直子神奈川大教授は「教え子への権力を意識していないのが一番の問題」と指摘します。相次ぐ教育者の犯罪は、学校だからこそ起こる「権力」犯罪だと言えるでしょう。



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