アイドルたちが本気で短歌を詠む「アイドル歌会」(撮影/林 晋介)
アイドルたちが本気で短歌を詠む「アイドル歌会」(撮影/林 晋介)
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 若者たちの間で短歌が流行しているという。ツイッターやインスタグラムでは自作の投稿がブームとなり、歌集の出版も相次ぐ。その理由を探った。

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【無くっても死なないけれど無いとダメ ファンの歓声、シルバニアたち】

 女性アイドルたちが五七五七七のリズムで心情を詠む「アイドル歌会」という一風変わったイベントが3月、東京・池袋であった。

 冒頭の歌はアイドルグループ「いぎなり東北産」の律月ひかるさんが「歓声」というお題で詠んだ一首。上の句に「確かにそういうものってあるな」と共感し、アイドルらしい話題から、個人の内面が垣間見えるお気に入りのキャラクターへの“飛躍”に心惹かれ、ドキッとさせられた。

「アイドル歌会」を主催するのは「短歌研究」を発行する短歌研究社。10回目の今回は4400円のチケットが完売し、配信も含めると約700人が参加した。國兼秀二編集長は「ネット上では平日昼間でも200首ほどのツイートがあるなど、若い世代を中心に短歌がこれまでになく広がっています」と話す。

 ツイッターでは「#tanka」のハッシュタグで自作の短歌が詠まれ、インスタグラムには「#短歌フォト」の投稿が5.7万件あり、写真と短歌がアップされている。ウェブサイト「うたの日」では、毎日出されるお題に合わせて短歌が投稿されている。

 日本唯一の詩歌専門の文学館、日本現代詩歌文学館(岩手県北上市)の豊泉豪館長補佐が言う。

「いまSNSなどのインターネット上で広まっている短歌は、普段の生活で話しているような平易な言葉が使われ、キャッチーで、わかりやすく、共感しやすい歌が多く詠まれていると思います」

 短歌ブームはネットにとどまらず、歌集の出版も盛んになっている。

 福岡市の出版社、書肆侃侃房は2002年の創業以来、160冊以上の歌集を手がけてきた。代表の田島安江さんは「初めこそ書店に置いてもらうことにも苦労しましたが、やっと1万部を超える歌集が出るようになってきました」と、人気の広がりを感じている。

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唐澤俊介

唐澤俊介

1994年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。朝日新聞盛岡総局、「週刊朝日」を経て、「AERAdot.」編集部に。二児の父。仕事に育児にとせわしく過ごしています。政治、経済、IT(AIなど)、スポーツ、芸能など、雑多に取材しています。写真は妻が作ってくれたゴリラストラップ。

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