『メイド・イン・ジャパン』ライオネル・ハンプトン・アンド・ヒズ・オーケストラ
『メイド・イン・ジャパン』ライオネル・ハンプトン・アンド・ヒズ・オーケストラ
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 10年ほど前までNHK―FMに「オールデイ・ジャズ・リクエスト」という年一度の特番があった。ファクス、メール、ホームページで寄せられたリクエストを、昼過ぎから深夜におよぶ生放送中にかけるというものだ。たしか1999年から2004年までで、当初は「体育の日」に、のちに「文化の日」や「勤労感謝の日」に放送されたと記憶する。何回目のことだったか覚えていないが、ライオネル・ハンプトンの畢生の名演で知られる1947年の《スターダスト》が最多得票に輝いたことがあり、「なるほど」と思った。というのも、およそジャズとは無縁の先輩たちが《スターダスト》について熱っぽく語る場面に二度は出くわしていたからだ。いまや70代から80代の先輩方にとっては青春の血を滾らせた一曲と言えるのではないだろうか。ハンプトンが自身の役どころで出演した伝記映画『ベニー・グッドマン物語』も一般的知名度の向上に一役買ったと察せられる。

 1963年4月に大編成コンボを率いて初来日、67年1月はトリオを、69年4月は中編成コンボを率いてのものだった。1981年9月に「オーレックス・ジャズ・フェスティヴァル」出演でビッグバンドを率いて来日、観衆を熱狂の渦に巻き込んだとされる。おかげで翌年5月に早くも来日が叶う。推薦盤は東京と横浜での記録だ。翌1983年にLPで発表され、91年にCD化された。あとは【リリース情報】をご覧いただきたい。

 コンサートと同じくオープナーは国内盤のタイトル曲《エアメイル・スペシャル》だ。《フライング・ホーム》と並ぶ十八番とあって最初と最後の全合奏を除いて御大が独走、終盤には同音を叩き連ねて煽ること煽ること。いやはや、恐るべきリズム感と即興魂だ。

《アドヴェント》はトランペットのジョン・ウォーカー作の哀調を帯びたスインガーだ。自らテーマをリード、均整のとれたソロを披露する。ジョン・コリアンニの活力に溢れるピアノ・ソロ、御大の歌心豊かなソロ、全合奏を経てウォーカーのリードで締めくくる。

《スターダスト~ムーングロウ》はコンサート終盤のハンプトン大会!を飾った十八番メドレーだ。どちらも瑞々しい情感でうっとりさせるが、それだけでは終わらなかった。後者の2コーラス目からは急行→特急と乗り継ぎ、手練れのマシンガン奏法で圧倒する。

《メス・イズ・ヒア》は御大自作の十八番だ。コンサートでは上記のメドレーに続いて演奏されたとあってか推薦盤では4曲目に置かれている。御大の軽快で嬉々としたソロ、やがてブレイクする我がマルタの古めかしいアルト・ソロに頬もゆるむ、楽しい演奏だ。

《インタープリテイションズ》は《アイ・ガット・リズム》《ジョイ・スプリング》に基づく、テナーの俊英リッキー・フォード作のミディアム・ファスト系だ。御大の快調は言わずもがな、フォードが師ローランド・カーク譲りの豪放なブロウで大いに気を吐く。

《マイナー・シーシス》はピアニスト、ジェームズ・ウィリアムス作のファスト系だ。トランペットのヴィンス・カトロ、ジョン・マーシャル、バリトンのグレン・ウィルソン、コリアンニ、御大、テナーの異才ポール・ジェフリーと、好演~快演の連続に心も踊る。

《ジョードゥ》はフレディ・ハバード作のモーダルなファスト系だ。これまたカークの衣鉢を継ぐ鬼才トム・チェイピンの熾烈なアルト、御大の耳を疑うほど清新なヴァイブ、一糸乱れぬサックス・ソリ、バリー・ライズの烈火噴き出すトランペット、ジェフリーのドス黒く渦巻くテナー、迫力の全合奏と、聴き所が満載! 本作のベスト・トラックだ。

《ヴァルヴ・ジョブ》はフランク・コモなる人物作の軽快なミディアム・ファスト系だ。テーマはトロンボーン部隊が合奏でリード、トロンボーンの三者それぞれ、コリアンニ、御大の達者なソロが続き、再びトロンボーン陣のリードで終える。快適なスインガーだ。

 前年のライヴ盤は熱狂がデマに思えるほどかったるくて見送ったが、これは文句なし。成功の所以は第一にメンバーが前年より実態に近かったことにある。バンドのまとまりと迫力は前年を軽く凌ぐ。第二に御大の出来だ。自身はスイング派で周りはモダン派だが、違和感はなく清新ですらある。最後に選曲だ。我がジョージ川口との果たし合いを外し、御大の十八番より若手の作品に重きを置いて「お祭り」を免れた。晩年の代表作に推す。[次回2月23日(月)更新予定]

【収録曲】
『Made in Japan』 Lionel Hampton and his Orchestra (Ho-Timeless)

1. Air Mail Special 2. Advent 3. Stardust - Moonglow 4. Mess Is Here 5. Interpretations Opus 5 6. Minor Thesis 7. Jodo 8. Valve Job

Tracks 1, 2, 4, 5: Recorded at Kosei Nenkin Hall, Tokyo, on June 1, 1982.
Tracks 3, 6-8: Recorded at Kanagawa Kenmin Hall, Yokohama, on June 2, 1982.

Lionel Hampton (vib), John Marshall, Barry Ries, John Walker, Vince Cutro (tp), Chris Gulhaugen, John Gordon, Charles Stephens (tb), Yoshi Malta (as), Tom Chapin (as, fl), Ricky Ford, Paul Jeffrey (ts), Glen Wilson (bs), John Colianni (p), Todd Coolman (b), Duffy Jackson (ds), Sam Turner (cga, per).

【リリース情報】
1983 LP Air Mail Special / Lionel Hampton All Stars Live in Japan '82 (Jp-Paddle Wheel)
  ※《Mess Is Here》《Valve Job》を除く6曲を収録
1984 LP Made in Japan / Lionel Hampton and his Big Band (Ho-Timeless)
  ※全8曲を収録
1984 LP Made in Japan / Lionel Hampton & his Big Band (Glad-Hamp)
  ※《Advent》《Interpretations Opus 5》《Minor Thesis》《Jodo》と
   渋谷公会堂で録られた《Evidence》《Sans Souci》を収録
1991 CD Air Mail Special / Lionel Hampton All Stars Live in Japan (Jp-Paddle Wheel)
  ※全8曲を収録
2000 CD Made in Japan / Lionel Hampton and his Orchestra (Ho-Timeless)
  ※推薦盤、曲順変更:8曲目《Mess Is Here》を4曲目とし、以降順次繰り下げ
2001 CD Jazz Legends in Japan / Lionel Hampton & Benny Carter
  ※Benny Carter Jazz Allstar Orchestra Live in Japanとの2in1
   《Mess Is Here》《Valve Job》を除く6曲を収録

※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。

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