女子ダブルスの試合中に“失格”となり注目を浴びた加藤未唯
女子ダブルスの試合中に“失格”となり注目を浴びた加藤未唯
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「コートに向かった時、事前情報は一切ない状態でした。ですから現場で聞き取りし、その場で判断しなくてはいけなかったのです。私は素早く状況を分析し、そして、正しい決断を下しました」

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 全仏オープン大会レフェリーのレミー・アゼマール氏は、フランスの公共ラジオ放送局『フランス・アンフォ』の取材に対し、そのように語った。

 彼が言及しているのは、女子ダブルス3回戦、加藤未唯/アルディラ・スチアディ対マリエ・ブズコバ/サラ・ソリベストルモ戦。ボールガールに“危険球”を当てたとして、加藤を失格に処した件である。

 この出来事の経緯については既に多く報じられているが、改めて、以下に簡略的に記しておこう。

 ポイント間のルーズボールを、加藤がバックハンドでスライス回転をかけて、サーバーである相手コートへと送る。この打球が、ボールガールの首の付け根付近にノーバウンドで当たった。

 それを見た主審は、加藤に“警告”を与えるが、対戦相手は「失格だ」と抗議する。

 主審は二人を諫めるが、なお引き下がらなかったため、”揉め事の仲裁係“的な役目を担うスーパーバイザーを呼ぶ。

 スーパーバイザーは主審から話を聞き、レフェリーを呼ぶ。“失格”か否かの判定を下せるのは、レフェリーのみだからだ。

 コートに到着したレフェリーのアゼマール氏は、主審やボールガールたちにも話を聞いた上で、失格を加藤に言い渡す。この時、加藤やパートナーは「故意ではない。動画を見て欲しい」と頼むが、「それは出来ない」とアゼマール氏は応じた。

 テニスのライン判定に、高速カメラ(ホークアイ)による再審システムが導入されたのは、2006年と古い。ただこれはあくまで、ボールが落下した地点が“ラインの外側か内側か”をリアルタイムで判定するためのもの。ラインコール以外に用いることはなく、ゆえに現在でも「2バウンドか否か」などに関しては、ビデオ判定が採用されることはない。

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