「追い風となっている要因のいずれも、一過性のものではありません。さらに、半導体や電気自動車(EV)、脱炭素といった5~10年の長期にわたって拡大が期待できる市場が経済を押し上げている。こうした市場には多くの日本企業が食い込んでいます。足元の株価は急激に上昇してきたので一時的に調整する場面もあるでしょう。しかし、景気は新型コロナウイルスによる停滞から抜け出し、正常な循環サイクルに回帰しつつあり、次の回復ステージに向けて株価も新しい上昇トレンドが始まっているとみています」(同) 

 日本株の先行きを見通すうえで気になるのは米国経済だ。りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一チーフ・ストラテジストは言う。 

「米国の景気が急失速するのか、ソフトランディング(軟着陸)するのか、その見極めがつくまでは、海外の主要市場が一進一退する中で日本株だけがどんどん上がっていくようなことにはならないでしょう」 

 米景気の先行きをめぐり、市場関係者の見方は分かれている。米国のインフレ圧力は当初想定していたよりも強く、米米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げの姿勢を緩めていないからだ。物価の値上がりを抑えるには金利を引き上げる必要があるが、景気を冷ます副作用も生じる。 

 市場関係者の間では、FRBは6月13~14日に予定する米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げを見送るとみられているものの、その次の7月の会合では利上げを実施するとの見方が強い。FRBの利上げの姿勢が長引けば、それだけ景気にも響く。 

 とはいえ、黒瀬さん自身は、米景気はソフトランディングに向かうと考えている。 

「米国の中堅銀行3行が相次ぎ破綻した影響で沈静化に時間はかかっていますが、米政府は預金保護や公的資金の注入といった形で傷口を広げないように対処しています。企業向けの融資動向などにどう影響するかを引き続き見守っていく必要はありますが、信用不安が大きく広がる可能性は少ないのでは。米国では再生可能エネルギーや半導体関連の大規模な投資計画が進んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大時に支給された給付金もまだ相当程度残っているとされ、これが消費に回れば景気を下支えする。秋口にもソフトランディングへの見方が強まれば、株価も上昇に向かうでしょう」(黒瀬さん) 

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“下値は堅い”印象