『Aurex Jazz Festival '80 - Battle of The Horns』 ※写真は84年発売のEast World盤(CD)
『Aurex Jazz Festival '80 - Battle of The Horns』 ※写真は84年発売のEast World盤(CD)
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 1980年は延べ57組が来日した。まさしく旬のフュージョン勢が25組と大躍進、主流派の13組が続く。新主流派は5組、ビッグバンド、ヴォーカルは各4組どまりで、スイング、フリー、ワールド系は各2組と振るわない。いまさらながら気を引かれるのは1月の「ザ・クルセイダーズ」、2月の「グローブ・ユニティ・オーケストラ」、4月のエグベルト・ジスモンチ(ギター、ピアノほか)、パット・メセニー(ギター)、5月のジョニー・グリフィン(テナー)、6月の「ウェザー・リポート」、7月の「スタッフ」「イラケレ」、9月のオーレックス・ジャズ・フェスティヴァル’80、10月のソニー・スティット(アルト)、11月のアート・ペッパー(アルト)、12月の「ステップス」、ウディ・ショウ(トランペット)だ。3月の「カウント・ベイシー楽団」と6月の「ザ・マンハッタン・トランスファー」は(毎回、足を運んでいたから)大阪で観たにちがいない。

 25組が33作を残した。半数あまりは日本人との共演盤で、スタジオ盤では20作中12作(11作は和ジャズ)を、ライヴ盤では13作中5作(3作は和ジャズ)を占める。ライヴ盤の候補10作から凡作、未CD化、入手難を外し、オーレックスでの『バトル・オブ・ザ・ホーンズ』『キング・オブ・スイング』、『アンリリースド・アート・ペッパーVol.7』、「ステップス」の『スモーキン・イン・ザ・ピット』を紹介していく。

 9月、ジョージ・ウェインのプロデュースの下、東芝のオーディオ製品のブランド名を冠したオーレックス・ジャズ・フェスティヴァルが開催される。東京の会場は武道館で、大阪と横浜は野外ステージだった。評判を呼んだ同フェスティヴァルは翌年以降も続く。毎回、スイングから同時代まで大物が居並ぶプログラムに驚き、こんな大盤振る舞いでは早々にネタ切れになるのではと案じていたら4年で幕を下ろす。この年はベニー・グッドマンほかの「キング・オブ・スイング」、ベニー・カーター(アルト)ほかの「ジェントルメン・オブ・スイング」、ディジー・ガレスピーほかの「バトル・オブ・ザ・ホーンズ」、フレディ・ハバードほかの「ジャズ・オブ・ザ80’s」というプログラムが組まれた。入手可否云々以前に、カーター組は予定調和的な凡演で、フレディ組は上々にとどまる。快演級で入手可能なグッドマン組とガレスピー組を紹介しよう。まずはガレスピー組だ。

 ガレスピーと、イリノイ・ジャケー~エディ“ロックジョウ”デイヴィス~ハロルド・ランドの3テナーが主役を張り、カル・ジェイダー(ヴァイブ)、シダー・ウォルトン、エディ・ゴメス、シェリー・マンが脇を固める。タイトルは粗っぽく冗長なブロー大会を懸念させるが、花も実もある快作だ。実状はともかく、ブロウ・ナンバーは1曲に抑え、それぞれをフィーチャーしたスインガーやバラードを中心にした制作側の手柄としたい。

《チュニジアの夜》はガレスピーをフィーチャー、63歳とくれば「烈火の如し」とはいかないが、張りも鳴りもよく起伏に富むラインを連ねて立派だ。ゴメスのソロが出色。

《ザ・ピースメイカー》はランドをフィーチャー、コルトレーン・マナーも消化した、優雅に漂いつつエモーションを募らせる語り口に酔う。ウォルトンの佳演が華を添える。

《コン・アルマ》は再びガレスピーをフィーチャー、静と動、知と情のコントロールが絶妙だ。4分49秒、御大の出ずっぱりだが、飽かせないどころかもっと聴いていたい。

《言い出しかねて》はロックジョウをフィーチャー、言い出しかねていた武骨な男!が意を決して最後に思いの丈をぶつける。ホーキンスに連なる、男の純情を綴った力演だ。

《タンジェリン》はジェイダーをフィーチャー、場違いの感もあったラテン・ジャズの雄が歌心を発揮、軽快で清涼感に溢れる西海岸風の好演を披露する。ウォルトンもいい。

《ジャンゴ》はリズム隊をフィーチャー、ウォルトンのピアニズムに狂喜し、ゴメスの創造的なソロに唸り、マンの陰影豊かなソロに舌を巻く。迷わずベストトラックに推す。

《恋人よ我に帰れ》は全員揃い踏み、実体は同曲のコード進行に基づいたホーキンスの《ビーン・アンド・ザ・ボーイズ》だ。ゴメス以外で回すソロは多くが上々にとどまる。聴きものは気合い入りまくりのロックジョウと、ヌラリクラリすり抜けていくランドだ。

 熱血奮闘ライヴの類ではない。それぞれが肩肘張らず、とはいえ適度の緊張感に満ち、ルーズなジャム・セッションに堕さない。思わず頬が緩む、心地よい時間が流れていく。当初LPで発表された同フェスティヴァルのライヴ盤はCD化されたが、いまとなってはどれもこれも入手難だ。推薦盤も法外な価格や結構な価格のものが少なくない。LPなら手頃な価格で入手できるだろう。なくても困らないが、あれば繰り返し楽しめる快作だ。[次回7月7日(月)更新予定]

【収録曲一覧】
『Aurex Jazz Festival '80 - Battle of The Horns』 (Jp-Somethin'else Classics [Jp-East World])

1. A Night in Tunisia 2. The Peacemaker 3. Con Alma 4. I Can't Get Started 5. Tangerine 6. Django 7. Lover, Come Back to Me
パーソネル
Dizzy Gillespie (tp on 1, 3, 7), Illinois Jjacquet (ts on 7), Eddie "Lockjaw" Davis (ts on 4, 7), Harold Land (ts on 2, 7), Cal Tjader (vib on 1, 5, 7), Cedar Walton (p), Eddie Gomez (b), Shelly Manne (ds).

Tracks 4-6: Recorded at Budokan, Tokyo, September 2, 1980.
Tracks 1-3: Recorded at Expo Park, Osaka, September 6, 1980.
Track 7: Recorded at Yokohama Stadium, Yokohama, September 7, 1980.

※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。

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