「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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3月になり、来年春に卒業する大学生などの就職活動が本格的にスタートしていますね。今は、内定辞退を防ぐ対策法として、親御さんが内定承諾に賛成しているかを確認する「オヤカク(親確)」という言葉があるそうです。
私自身の就職活動を振り返れば、親に何かを言われたことはありません。
4人兄弟の3番目で、上の兄2人はいろいろと言われていた記憶はありますが、3人目となれば親も慣れたもので(笑)、「なるようにしかならない」と思っていたのかもしれません。
実家暮らしだったので、固定電話に「会社を名乗る人から電話があったら会社名と担当の方のお名前、電話番号を聞いておいて」とお願いするくらいでした。
中学を出て、あるいは高校を出て働く場合は、親が就職活動に関わることも必要かもしれません。
でも大卒ならもうお酒もたばこも選挙も自分の判断でやる年齢。何かあったら「相談役」として少しアドバイスする。その程度でよいのではないかと思います。
世の中にはたくさんの仕事があります。親が語れることは、そのほんの一部です。
また私の時代は「これから30年、40年とこの会社で働いて勝負していくんだ」という意識でしたが、いまは最初に勤めた会社に一生を捧げるというよりも、転職しながらキャリアを築いていくのが当たり前の時代になっています。
だからこそ、就職も子どもが「自分の判断で」「むしろ親の価値観じゃない価値観で」決めていくべきだと私は考えます。
そのことが、社会に対して当事者意識を持つことにつながるし、自分の人生は自分で切り開いていくんだという意思にもつながる。
その方が、人生はより充実したものになるのではないかと思います。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長