撮影・原田和典
撮影・原田和典
『虹色モザイク / ENJOY!! ENJO(Y)!!』アップアップガールズ(仮)
『虹色モザイク / ENJOY!! ENJO(Y)!!』アップアップガールズ(仮)

 12月1日のアプガは「AKIBAカルチャーズ劇場」で定期公演をおこなった。1回目が「~定期公演59回 少し遅めの新井愛瞳誕生日スペシャル~」、2回目は「~定期公演60回 年末年始ビフォア公演Vol.1~」、3回目は「~定期公演61回 年末年始ビフォア公演Vol.2~」だ。1回目は11月19日に16歳になった新井愛瞳の構成・選曲によるプログラム。ぼくが最初にアプガを見たとき、新井愛瞳は自己紹介で「14歳」といっていた。それがもう16歳なのか。メンバーで一番のしっかり者との声も高いが、それは年上組のキャラクターが強烈すぎるからだろうか。

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 途中、「ドリフの国語・算数・理科・社会」のような教室コントを含みながらの展開はとにかく楽しく、ひたすら盛りあがった。進行役を務めたお笑いタレントのさわやか五郎が「言っちゃ悪いけど、アプガは正統派(のアイドル)じゃないぞ」と言い放ったとき、森咲樹が心から驚いた表情をしていたのもこの日の名場面のひとつだった。2回目と3回目はMCを最小限に、ひたすら曲をたたみかける内容だ。ライヴ・アーティストとしての底力を投げつけてくるようなステージは、圧巻のひとことに尽きた。最新シングル「虹色モザイク」はこの日が初公開。客席の長椅子上でのパフォーマンスには血管がちぎれるかと思うぐらい驚いたし嬉しくなった。見上げると数十センチの距離でアプガが歌い踊っている…竜宮城だ……。
 こんな風景はオールスタンディングの会場やホールでは決して体験することができない。基本的に着席制であるAKIBAカルチャーズ劇場だからこその“趣向”である。

 12月13日には渋谷club asiaで「アップアップガールズ(仮)VS大森靖子」が行なわれた。大森靖子は2013年に最も躍進したシンガー・ソングライターのひとりだろう。かつては高円寺「無力無善寺」あたりに出ていたというから驚かされる。ぼくも「無善寺」には何度も出かけていて、好きの店主のアクの強い弾き語りや、もう解散してしまったが札幌の2人組“角煮”、全部アカペラで歌う2人組“エーツー”(《あなたにスキンケア》という超名曲があった)、鳩山浩二などいろんな才能に出会った。大森靖子のパフォーマンスも、ひょっとしたら見て(聴いて)いるかもしれない。
 ぼくはディスクユニオンのウェブサイト内で「JAZZ徒然草」というコーナーをやっているのだが、ライターの土佐有明さんをゲストに迎えた第81回の中で彼女についてとりあげている。土佐さんはこういっていた。「(大森靖子は)とにかくライヴが凄いんですよ。道重さゆみ推しのアイドルヲタでもあって、本人もアイドル性があるし、アイドルの気持ちが分かるところが魅力的なパフォーマンスに繋がっていると思いますね」。

 公演の模様は1月20日発売「ミュージック・マガジン」に掲載されるので詳細は省くが、アプガの他アーティストに対する親和性、柔軟性には本当に驚くしかない。これは誰かに指図されてできるものではない。アプガの皆がとてもオープンな心を持っていて、いろんな出会いに対して(それは人間だけではなく、物にも)生き生きした好奇心を持っているからこそ、こういう愛あるコラボレーションが可能になるのだ。だからぼくはいつも言っているのだ。新しい音楽体験をしたければ、新鮮な楽しみに全身を浸したければ、生きる喜びを感じたければアプガを聴け、そして観るのだと。

 対大森靖子戦の余韻に浸っているうちに12月15日がやってきた。ぼくはただただその日が来るのを待っていればいいが、アプガの皆さんはその間もリハーサルをしたり取材やプロモーションに追われているわけで、それが職業とはいえ本当に大変だなと思う。だが、あれほどのダンス、ヴォーカル、エンタテインメントのスキルがあって、かわいさモリモリなのだから、それらを「そうした才能に恵まれていない者」(たとえば、ぼくのようなむさ苦しいファン)に分け与えるのは人間の筋としては実に正しいのだ。この日、おこなわれたイベントのタイトルは「T-Palette Records 感謝祭 2013」。タワーレコードのアイドル専門レーベル“T-Palette Records”の所属アーティストが一堂に会する、文字通りのアイドル祭りである。いちレーベルに在籍しているひとだけを集めてひとつのライヴが成立するなんて、60年代のタムラ・モータウン・レビューや、70年代のCTIオールスターズみたいではないか。そうした試みがアイドルだけで成り立ってしまうほど、今の日本アイドル界は充実のきわみにあり、その中心にいるのがTパレことT-Palette Recordsなのだ。

 イベントは5時間以上にわたって続き、アプガはトリを飾った。その前やさらにその前に登場したアイドルが、どちらかというと洗練された、おしゃれ系のサウンドで客席にいい空気を運んでいたので、余計にアプガのお祭り感、荒々しさ、泥臭さ、瞳の中に炎がメラメラと燃えあがっているがごとき一挙一動が強調されて目や耳に飛び込んできた。空手チョップ、エア刀剣、棒ラップ、演歌、タオルぶん回し、人間おみこしなどを隠し味に、アプガはアイドル・ポップスの未来を拓き続ける。佐藤綾乃が絞り出すようにシャウトする「バカやるって超大変っ!!(>_

 というわけで、ぼくはこれから「聖なる夜の贈りもの2013 in 赤レンガ アップアップガールズ(仮)アプガ第二章(仮)クリスマスイブイブイブ決戦 ~横浜赤レンガ~」に行ってくる。28日にも元旦(そう、まさしく1月1日)にもアプガは単独ライヴをする。25日にはニューシングル《虹色モザイク/ENJOY!ENJO(Y)!!》も出る。そのリリースイベントも24日ららぽーと、25日マルイシティ、29日ガンダム広場で行なわれる。アイドル界の回遊魚、アップアップガールズ(仮)は年末年始も徹底的にとことん動き続けるのだ。[次回1/27(月)更新予定]