ナズが、2017年5月30日、“Action Speaks Louder Than Words”(行いは言葉より雄弁)と題されたエッセイをMass Appealに掲載した。この1,000ワードほどのエッセイで彼は、トランプ大統領を“人種差別主義者”と批判し、黒人アーティストとして自分がどう行動すべきかということを力強く述べている。
彼は冒頭で、「黒人がアメリカで少しでも成功を手にするには“O.J.スタンス”を取る必要がある。“俺は黒人じゃない、O.J.だ”って」と書き出している。O.J.とはおそらく1960年代後半から70年代の終わりにかけて活躍したアメフト選手で、1994年に白人の妻の殺害容疑で裁判になったO.J.シンプソンのことを意味している。そして彼は、「人々に起きている悲惨なことを無視すればファンタジーの世界、自分だけが所属するアメリカン・ファンタジーの世界で生きられる。起きていることを無視すれば、平穏を得ることができる。なぜならば周りで起きていることは人を発狂させるほどひどいから」と言い切る。
「自分は今政治に注目していない」と彼は続ける。「どうしてその必要がある?意味がない。自分には筋が通らない。人種差別主義者が大統領だってことはみんな分かっている。人がバカなことを言ってもいい。コメディアンが差別的なことを言ってもいい。人がたまにそういうバカなことを言うことがあっても構わないけれど、大統領という責任を負った人物がそんな態度をとれば、自分のグループの外にいる人々に向けて“お前らには何の価値もない”という強いメッセージを送っていることになる」と彼は憤る。
「俺は自分の仕事を通じてこれらの問題に取り組む。どんな大統領が在職していても自分の仕事には直接影響がない。彼が人に及ぼす影響が俺にも影響する。俺はそれを観察して、自分のクリエイティブ・プロセスに取り入れる。人物(トランプ)そのものには何の興味もない」と彼は政治との距離の取り方について綴っている。
そして彼は、「俺が注目するのは、日々の生活の中で現実の人々に起きていることだ。彼らの行動、彼らが下す決断、そしてそれが家族にどう影響するかということ。俺はひとり親家庭で育ったから、その生活に影響された。でもそれは俺を止めることはできなかった。だから俺は市井の人々に話しかける。俺はみんなに話しかける。人々が悩まされていることがあるなら、俺はそれについて発言する。人々が悩まされて変化を求めるなら、俺はそれについて発言する」と宣言している。
実際には誰がホワイトハウスにいようが芸術は栄えるだろうというナズは、「俺は行動して進む。俺の音楽が行動だ。俺が音楽を通じてみんなに与えているものは俺の行動なんだ」と綴り、「無駄話をしている暇はない。行動する時間はある。俺が話している時は行動している時だ」と締めくくっている。
政治に興味はないと言いつつも、昨年ロビン・シックの「ディープ」で、“you don't think it's an emergency?(非常事態だとは思わないのか?)/ A toupee wearin' liar's tryna run the U.S.A.(カツラを被った嘘つきがアメリカを動かそうとしてるんだぜ)”とラップしていたナズ。ニュー・アルバムは完成間近で、9月からはローリン・ヒル、コメディアンのハンニバル・ブーレスとレゲエ・スターのChronixx(クロニックス)と回る北米ツアーが始まる。
◎エッセイ全文(英文)
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