本書は、第二次安倍内閣とネットを中心としたメディア戦略の関わりについて、月刊「創」の掲載記事をまとめたものだ。
 ソーシャルメディア上の首相の発信に対する反応を組織的に分析、検証するなど、メディア対策に力を入れる安倍政権。本書の狙いはそうした取り組みの効果を功罪あわせて見てゆくことにある。興味深いのは、第一章で展開される津田大介氏×安田浩一氏×鈴木邦男氏の鼎談だ。ニコニコ動画に自民党のバナー広告を出したり、ネット上での党首討論を提案するなどして安倍政権が「ネット右翼」と呼ばれる層の支持を獲得する具体的な手法が解説される。ネット言論では戦後民主主義的な「良い子の」価値観よりも、憲法破棄のように「シンプルで力強いもの」がウケるという安田氏の見立てがわかりやすい。
 自民党政権と民主党政権のメディア対応の違いや、ネット動画と政治との関わりにも話が及ぶ。ネットがこれからの政治に秘める可能性と危険性の両側面を教える教材として、支持政党にかかわらず一読の価値がある。

週刊朝日 2013年11月8日号