ロシア連邦の構成主体と人口密度。モスクワやサンクトペテルブルクなど、ヨーロッパに近い都市部に人口が集中していることがわかる(地図作成・株式会社ウエイド)
ロシア連邦の構成主体と人口密度。モスクワやサンクトペテルブルクなど、ヨーロッパに近い都市部に人口が集中していることがわかる(地図作成・株式会社ウエイド)

 ロシアの正式名称は「ロシア連邦」。その名前の通り、1991年にソ連が崩壊したときからいままで、ロシアは連邦制をとっている。現在、ロシアは「85」の連邦構成主体があると主張しているが、国際的には「83」とみなされている。

【写真】ウクライナとロシアの融和への願いを込め、民族衣装が掲げられたレーニン像

 この差はなぜ生じているのか。『地政学×歴史で理由がわかる ロシア史 キエフ大公国からウクライナ侵攻まで』(朝日新聞出版)が、その理由を解説している。

「連邦」とは、いくつもの国や共同体が集まった国家集合体のことを指す。ロシアでは、ロシア人が多く居住する地域を「地方」や「州」、ロシア人以外が多く居住する地域を「共和国」「自治州」「自治管区」と分けて、これらを「連邦構成主体」と呼んでいる。

 上の地図を見てほしい。ここからもわかるように、ロシアの国土は広大だ。この広い国土に、最も多いロシア人を皮切りに、タタール人、ウクライナ人、バシキール人など、190近くの民族が暮らしている。当然のことながら、民族の数だけ宗教の数も多くなる。キリスト教だけではなくイスラーム教にユダヤ教、そして仏教徒まで、アメリカ以上に多様な宗教や文化を包含していると言っていいだろう。

 2000年、大統領に就任したプーチンは、連邦を8つの管区に分けて、大統領全権代表をすべての管区に配置した。領土が広大で14もの国と国境を接しているロシアは、防衛のために緩衝地帯を求める思想が強い。当然、旧ソ連構成国への影響力を維持したいと考えているのだが、その思惑とはうらはらに、00年代前半から、旧ソ連構成国の間でロシアからの自立を目指す動きが顕著になる。

 03年、ジョージア(旧グルジア)では不正選挙疑惑をきっかけに民衆がデモを起こし、親露派大統領が辞任。翌年に親欧米派の大統領が誕生し、ロシアとの関係は急速に悪化した。これをバラ革命と呼ぶ。

 04年にはウクライナでオレンジ革命が、05年にはキルギスでチューリップ革命が起きて、親露派政権が崩壊。民主化を求める「カラー革命」が旧ソ連構成国に波及して、ロシアは焦りを深めていく。

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