長打力も備えたトップバッターとして印象深いのが2008年の浅村栄斗(大阪桐蔭)。前年は中田翔を中心に能力の高い選手が揃っていながらも、夏の大阪大会では決勝戦で金光大阪に敗れて甲子園出場を逃しており、この年の代は力がないと言われながらも見事に優勝を果たしたが、その象徴的な存在だったのが浅村だった。入学当初から期待されていたものの、2年夏まで背番号は二桁で、そこまで目立った活躍はしていない。新チームとなった秋の大阪府大会でも準々決勝でPL学園に0対9と大敗を喫し、センバツ出場も逃している。

 しかしその悔しさをバネに夏は北大阪大会(90回の記念大会のため大阪は2校が出場)を勝ち上がると、チームと浅村は甲子園でも大きく成長。浅村は6試合で打率.552(29打数16安打)と大活躍した。特に印象深いのが2回戦の金沢戦である。7回終了時点で1点リードを許す苦しい展開だったが、8回裏に浅村がこの日2本目となるホームランを放って追いつき、延長の末にサヨナラ勝ちをおさめたのだ。まさに起死回生という言葉がピッタリ当てはまる一打であり、チームの危機を救ったホームランだった。

 同じ大阪桐蔭では2012年に春夏連覇を達成した時の森友哉を挙げないわけにはいかないだろう。2年生ながら不動の1番・捕手として出場すると、1回戦の木更津総合戦ではいきなり3安打をマーク。続く済々黌との試合でも2試合連続となる猛打賞を記録し、第3打席ではライトスタンドに飛び込むホームランも放っている。さらに準々決勝では先頭打者ホームランも記録。準決勝と決勝では2試合で1安打に終わったものの、大会を通じて打率4割の成績を残し、8安打中5安打が長打という見事な活躍だった。ちなみに大阪桐蔭を指揮する西谷浩一監督も、これまで見てきた打者の中でボールをとらえる技術は森がナンバーワンだったと話しているほど、高校時代からその卓越したバッティングは圧倒的なものがあった。

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チームに勢いを与える1番打者の重要性