浅野佳代さんとアサノタカオさん(撮影/篠塚ようこ)
浅野佳代さんとアサノタカオさん(撮影/篠塚ようこ)

夫 アサノタカオ[48]サウダージ・ブックス編集人

あさの・たかお◆1975年、山梨県生まれ。名古屋大学大学院人間情報学研究科博士課程満期退学。2000年からブラジルのサンパウロ人文科学研究所で日系移民の文化人類学的調査に従事。新泉社や瀬戸内人など出版社勤務を経て独立、編集の仕事をしている

 ブラジルの奥地に日系移民の古老を訪ね、自然の中に体を浸して聞き書きし、本が伝えるものとは違う知恵を教わりました。今の編集者の仕事でも、東京に打ち合わせなどに行くのと同じ頻度で江の島に行き、波の音を聞きます。僕には必要なバランスなので。

 妻は一人旅をするのに、毎年1カ月ほど定期的に家からいなくなります。3日後にインドに修業に行くと言って急に旅立ったことも。家族はこうあらねばといった、しがらみを飛び越えているので、夫や父として振る舞おうとしたって彼女には全く通用しない。

 若い頃は自分の思い通りにしたい気持ちが強くて衝突もしましたが、妻=異文化と捉えたらフィールドワーカー魂が目覚めてきました。文化人類学的な目線では、理解できない存在は面白いと思うのが基本。今は会いに行ける宇宙人が家にいる感覚です。

 やるべきことをやったらいいと妻は言い、これまで僕の転職も移住も一切反対されなかった。その揺るぎなさに支えられています。

(構成・桝郷春美)

AERA 2023年3月6日号

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