しかし、振り返ってみれば「増税なき財政再建」のスローガンのもと、ガソリン税など道路特定財源の一般財源化を望んだのは財務省である。それを今さら自動車ユーザーに「原因者負担・受益者負担」を求めるのは都合がよすぎないだろうか。
■燃料税を廃止すべき
批判の声がやまない走行距離課税案であるが、実は11年前、公益財団法人日本生産性本部が、こんな提言をまとめている。
<国は2020年までに幹線道路の維持・補修・更新のため、廃止された道路特定財源制度に代わり、走行距離に応じた道路利用課金制度を導入すべき>(「2020年に向けた安定的な道路財源確保の方策に関する提言」)
さらに走行距離課税の導入と併せて「燃料税を廃止すべき」としている。燃料税は一種の走行距離課税なので、同様な税が二つ重なるのはよくない、というわけだ。
すでに、ドイツなど欧州のいくつかの国では走行距離課税を導入している。東京都などはこれらの事例を詳細に調査している。
現在、自動車関連の諸税は道路の整備や修繕と直接的な関係がなくなっている。ところが、自動車ユーザーの負担は道路特定財源存続時となんら変わらない。
自動車評論家の国沢光宏さんは以前の取材で、こう語った。
「走行距離課税が導入されると、一番困るのは地方の自動車ユーザーですよ。車って、必需品じゃないですか」
地方公共団体が管理する道路(舗装面積)は、日本の道路全体の約9割を占める。そのうち約7割は市町村の管理である。国が直轄する道路の修繕が進む一方、自治体は予算の確保に苦労し、道路の修繕どころか、点検さえも遅れている状況だ。
走行距離課税を導入するのであれば、道路損傷の原因者負担・受益者負担の観点から複雑な自動車関連諸税を見直す機会としてほしい。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)