これまでは指定医療機関だけが検査や診療を担っていたが、今後は制度的にはどの医療機関でも診療できるようになる。診察するかどうかは医療機関任せなので、実際に診察する医療機関が増えるかどうかは不明だ。これまで政府が指定医療機関に出していた補助金なども順次なくなっていくからだ。
原則として全て公費負担だった検査や治療の費用は、いずれは季節性インフルエンザと同じように公的医療保険を使う通常診療になり、多くの人に個人負担が生じるようになる。
ワクチン接種は予防接種法に基づいて実施されているが、感染症法上の類型が費用の公費負担などに影響する。23年度末までは全額公費負担による接種が続くが、接種が推奨される回数や時期は、これまでとは異なり重症化リスクの高さによって変わる。24年度以降は、接種に個人負担が生じる可能性もある。
5類への移行には、新型コロナウイルスの重症化率や致死率が低くなり、季節性インフルエンザに近くなってきたという背景がある。理由としては、ワクチンの普及や治療薬、治療法の開発、オミクロン株の病原性の低さが考えられる。
今後、マスクを含めた対策をとるかどうかを個人の責任で判断すべき機会が増える中で、留意が必要なのは後遺症だ。インフルエンザに比べ、新型コロナウイルス感染症は後遺症が長く続く人が多い。軽症でも後遺症が長引く人もいる。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERA 2023年3月6日号