■かまいたちや見取り図も優勝していない

 お笑い評論家のラリー遠田氏は、今回のM-1のオズワルドについてこう評する。

「オズワルドは今でこそ正統派のしゃべくり漫才師のようなイメージが定着していますが、もともとは独特のゆったりした間合いを持つ変則的な芸風だと思われていました。スローテンポの漫才はM-1では不利なのですが、彼らはネタの質を高めることに徹底的にこだわったことで、4年連続で決勝進出する快挙を達成しました。しかし、オズワルドほどの達人でも、毎年毎年、M-1の決勝で通用するような質の高いネタを作り続けるのは容易なことではありません。今年は今までの年に比べるとネタの仕上がりが少しだけ甘かったため、決勝では勝ち切れなかったのでしょう。今年の大会でトップ2に入ったウエストランドとさや香は、言葉の勢いが強くしゃべりのスピードも速いタイプ。やはりM-1ではこういう芸風の方が勝ちやすいのです。もともとM-1には不利な芸風であるにもかかわらず、今まで好成績を出し続けたオズワルドのことは無条件で称賛すべきだと思います」

 まだ結成9年目のため、少なくともあと6回はM-1出場資格を持つオズワルド。来年以降の優勝はあるのか。お笑い番組を多数手がける民放プロデューサーはこう分析する。

「M-1をさかのぼると、麒麟や和牛、かまいたちなど優勝してもおかしくないほどの完成されたネタを何度も出しているのに、優勝できないままM-1を卒業したコンビが何組かいます。現状のM-1はネタの完成度だけではなく、ネタ順だったり会場の雰囲気だったりでグルーヴ感を出せるかどうかが非常に重要視されます。2020年のマヂカルラブリーや、2021年の錦鯉がまさにそうで、お笑い好きがうなる上質なネタよりも、それを超える爆発力のあるコンビが圧倒的にウケる。そういった意味では、オズワルドは漫才がうますぎるんです。M-1優勝を目指すとなると、彼らは今、本当にしんどい時期に突入してしまったと思います」

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「十分にバラエティーの平場でやっていける」