役人にこっそり小判を渡して何かしらの便宜を図ってもらう――。まるで時代劇で見るような贈収賄事件が京都市を舞台に起こり、収賄罪で起訴された市の元局長に対する判決が2月28日に京都地裁で言い渡された。
判決によると、京都市子ども若者はぐくみ局の元局長、久保敦被告は、二つの保育園を経営する社会福祉法人「セヴァ福祉会」=京都市=の中西京子元理事長(贈賄罪で懲役1年執行猶予3年の判決確定)から、保育園に対する市の監査や補助金などで有利に取り計らってほしいとの趣旨であることを知りながら、約40万円相当の純金小判や約45万円相当の高級時計を受け取った。
地裁は「市の保育行政に対する社会の信頼を大きく損なう悪質な犯行」として、懲役1年6カ月執行猶予3年(求刑懲役1年6カ月)を言い渡した。
これまでの法廷での証言や論告などによると、久保被告と中西元理事長は、今回の一件だけの関係ではなく、長年にかけて蜜月関係が築かれていったことがわかる。
久保被告は、市保健福祉局子育て支援部保育課長に就任した2007年ころに中西元理事長と知り合った。その後、同局長、さらには2017年に市子ども若者はぐくみ局の初代局長に就任するなど昇進するにつれ、その時々で中西元理事長から仕立券や菓子折り、現金の供与、会食の供応を受けていたという。
かねて市の保育行政などに不満を持ち、久保被告を頼るようになっていた中西元理事長は2019年3月、京都市内のホテルで久保被告と会食し、
「これ、家帰ってから開けて」
と時計を渡した。
中西元理事長は法廷で、
「保育園の老朽化、整備には市の補助金が出て当然だと思っていました」
「定員が増えて、市から支給される委託費が削減された」
などと時計を渡した背景について説明した。
しかし、望んでいた結果とならなかったため、中西元理事長は2020年9月、小判を用意して久保被告に会い、
「監査でいつも変な人がきてぐちゃぐちゃ言う」
「定員はいつ減るのか」
などと伝え、時計の時と同様に、
「家に帰って開けてや」
と手渡した。