アクリル絵の具で様々なパターンの色紙を作る子どもたち
アクリル絵の具で様々なパターンの色紙を作る子どもたち
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大人たちも加わり、56枚もの色紙が完成
大人たちも加わり、56枚もの色紙が完成

 たくらみ中学年(小学3・4年生)クラスが今年度最後に挑むのは「色」プロジェクトです。

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 世界的ベストセラー「はらぺこあおむし」で知られる絵本作家エリック・カールのような色の魔法使いになって、コラージュ紙芝居を作ることを目指しています。

「『起承転結』って聞いたことある?自分の言葉で説明できるかな?」

 私からの問いかけに対し、もちろんという表情でうなずく最上級生のKくん。

 その一方で残りのメンバーは、聞いたことはあるものの、いざ説明せよと言われると少し自信なさそうな様子がうかがえます。

 そこで、学校の復習も兼ねて、まずはじめに「起承転結」の意味と使い方を学びます。

 たくらみキッズは1月の特別プログラムにて、なんとなく気になるもの・ことを感じながら歩きまわってみることで、たくさんの発見や疑問を見つけました。

 私はその時に集めた「ふしぎのタネ」をストーリーづくりに活用してみようと子どもたちに提案しました。

「何もないところから考えるより良いかも」

 彼らはその提案を快く受け入れてくれて、早速ストーリーの中身を検討し始めます。

 まっさらなコピー用紙に向かう彼らの表情は真剣そのものです。

「文さん、こんなんどうかな?」

 しばらくすると、ある男の子が私のところにストーリーの素案を持ってきました。その内容をざっと確認すると、すぐに明確な課題が見つかりました。

 設定が複雑で登場人物が多いため、読んでいて話の内容が全く頭に入ってこないのです。

 次の順番を待っていた子の作品は、「結」の部分がダラダラ長く、ストーリー全体がどうにも締まらない印象です。

 どちらにも、まずはシンプルにストーリーの骨格を決めてみてはとアドバイスを送りました。キャラクターや設定などの「肉付け」はその後で全然構いません。

 こういったやりとりを何度も繰り返し、ストーリーをどんどん洗練させていきます。

 紙芝居製作においては、ストーリーにあわせて構図を検討する必要もあります。

 エリック・カール作品の特徴である鮮やかな色彩と大胆な構図を真似て、登場人物をいかに生き生きと描くかが今回の重要なポイントです。

 小4のKくんはストーリーの最後に、主人公のシラサギがカラフルに変身する様子を描きたいとのこと。しかし、当初の構図ではシラサギが真ん中にちょこんとたたずんでいるだけで、見る人にインパクトが伝わりません。

「変身後の様子をわかりやすく伝えるためには、羽を広げてみたらどう?」

「そっか、正面から見た感じにすれば、もっと大きく描けるかも」

 小3のAくんが検討していたのは、カラスと何かがぶつかってごちゃまぜになるというユニークなアイデアでした。

「関係性が遠い方が組み合わせたら面白そうやね」

「じゃあ、カラスは空を飛んでるから、地上にいる生き物にしてみよかなあ」

 授業時間内でストーリーはあらかた出来上がったので、ホームワークで構図を完成させてくることになりました。

 翌週の授業ではコラージュで使用する色紙づくりに取り組みました。

 2台つなげて5メートル近くなる長机に新聞紙を敷き、導線を意識しながら道具を並べ、準備はオーケー。教室はまるで工房さながらです。

 薄紙にアクリル絵の具で色を塗り、様々なパターンの色紙を一枚一枚作っていきます。間違いを恐れず大胆に塗ることがモットーです。

 その日は見学者の方も大勢いらっしゃったので、我々の作業を手伝ってもらうことに。

 作業中、子どもたちは自由にできることが楽しいようで、思い思いに工夫を凝らして、型にはまらない独創的な作品を生み出していました。

 その様子を見て、大人も負けじと本気を出します。相乗効果で作品たちがどんどん伸びやかになっていくのが、はたから見ていてとても愉快でした。

 結果的におよそ1時間で56枚もの色紙が出来上がりました! 必要な素材が揃い、次回からいよいよ本格的に紙芝居製作に突入です。

 約10カ月間連載してきた「探究堂日記」は次回が最終回です。授業の進捗の都合で、次回の掲載は約1カ月後になります。

AERAオンライン限定記事

○山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。