ヒット作品を次々と生み出す岩井俊二の最新映画「ラストレター」が公開中だ。SNS時代に「手紙」を題材にした意図とは? 監督の岩井と主演の松たか子が語り合った。
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映画「ラストレター」は監督、岩井俊二の出身地、宮城が舞台。手紙の行き違いをきっかけに2世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描く。主人公の裕里を演じるのは松たか子。岩井映画への出演は、ヒロイン・卯月を演じた「四月物語」(1998年)以来だ。
岩井俊二(以下、岩井):裕里に松さんというキャスティングは自然に浮かびました。でも、最近ふと、裕里は「四月物語」の卯月によく似ていると気づいたんです。裕里は卯月の20年後のような、延長線上にいる人物みたいな気がして。それもあって松さんというイメージが浮かんだのかなと。
松たか子(以下、松):私は最初、卯月と似ていることに気づきませんでしたが、お声掛けいただいた時は、私でいいのかなと思いつつもすごくうれしかったです。
岩井:「四月物語」は僕が無理やり「短編を撮らせてくれ」と事務所に頼んで実現させた作品なので、松さんとは共犯的な関係で作っていたという思いがあるんです。今回久しぶりに松さんと一緒に仕事をして、僕の中では勝手にアットホームな気分になっていました。すごく支えられた感じがします。
松:ありがとうございます。でも、卯月も裕里も恋は報われないんですよね……。本人たちはハッピーなんですが、端から見れば「それでいいんだ?」っていう感じのキャラクターです(笑)。
岩井:そうだね(笑)。裕里は娘時代から変な嘘をついたり、ポジションの取り方が最後まで報われないんだけどかわいらしい。夫役の庵野秀明さんとも良い雰囲気を出してくれました。
松:庵野さんがダンナさんと聞いた時は想像がつかなかったのですが、面白そう! と。実際撮影していくと、この人だったら全部正直に言っちゃうし、いろいろあっても戻ってくるなと思いました。ご一緒していて、とても楽しかったです。