

昨年暮れ、1年3カ月ぶりに実現した日韓首脳会談。顔を合わせたからこその前進はあったが、関係改善にはまだ遠い。AERA 2020年1月13日号では、ここまでこじれた背景を朝日新聞前ソウル支局長が解説する。
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安倍晋三首相と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が昨年12月24日、中国・成都で会談した。日韓の正式な首脳会談は2018年9月以来、1年3カ月ぶりだ。日韓両政府によれば、両首脳は45分間にわたって協議し、外交当局間の対話を増やし、懸案の解決に努力する考えで一致した。
会談では懸案となっている徴用工判決と日本政府の輸出措置が主な議題になった。安倍首相が徴用工問題について「韓国の責任において解決してほしい」と迫り、文大統領が輸出措置について「7月1日以前の状態に戻してほしい」と訴えるなど、お互いの要求を繰り返したという。
18年秋、日本企業に元徴用工らへの損害賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決によって、日韓関係は極度に悪化した。何も対応しない韓国政府に業を煮やした日本は昨年7月、韓国向けの半導体素材などの輸出管理規制措置の強化に踏み切った。怒った韓国は翌月、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)破棄を決めたが、米国の介入で日韓は同年11月、協定の暫定的な存続で合意していた。
今回の会談は坂道を転げ落ちるように悪化していた日韓関係に改善の兆しが芽生え始めたなかで行われただけに、懸案関係への期待感も高かった。結果をまずまずと見るべきなのか、期待はずれだったと言うべきなのか。
首脳会談前、懸案解決に向けて期待感が高かったのは日本側だった。首相官邸の高官が、韓国国会の文喜相(ムンヒサン)議長が代表して12月18日に国会に発議した、いわゆる「文喜相法案」に期待をかける発言をしたのがきっかけだった。同法案は、おおざっぱにいえば、日韓の個人や企業が寄付した基金を財源に、元徴用工や遺族らに一定の金額を支給するというものだ。