垂直落下式ブレーンバスターなどの大技から固め技、関節技、飛び技と全くタイプの異なる技を華麗に使いこなすライガーは、世界広しといえども唯一無二の存在だ。

 所属団体がアメリカやイギリスで興行を行った際、ライガーに送られる歓声や入場曲「怒りの獣神」への手拍子は、世界的に人気の団体「WWE」のスター選手以上。世界のファンが、動画やSNSを通してライガーを知り、彼をリスペクトしているのだ。

 ライガーをきっかけに他のレスラーの認知度も上がり、海外で日本のプロレス界の評価はうなぎ登りだ。

 その構図は、日本が世界を引き付けてきた様にも重なる。家電、自動車、時計──。メイド・イン・ジャパンの高い技術力で世界からリスペクトされた日本は、やがてゲームやアニメなどのソフト文化でも「クール」「カワイイ」と注目を集めた。ライガーはソニーであり、トヨタであり、マリオであり、孫悟空なのだ。

 三つ目はライガーの持つ「おもてなし力」だ。

 世界的なレジェンドとなってからも、ライガーは団体の規模を問わず、各地で他団体のマットに積極的に参戦し続けてきた。他団体のマットではヒール(悪役)に徹し、相手を全力で苦しめることで試合を盛り上げる。自在に試合をコントロールできる試合巧者であることはもちろん、その熱き闘いぶりが、相手選手の良さを最大限に引き出し、名勝負を生み出してきた。それは、会場を訪れた人を心から慈しみ、お迎えする「おもてなし」そのものだ。

 平成の31年間で、日本を訪れる外国人観光客は飛躍的に増えた。その原動力となったのは、訪れた人々を温かく迎えるおもてなし力だったことは、疑いようもない。(ライター・伊藤彩子)

※『現代のプロレス人気生んだライガーの「人材発掘力」 引退試合の相手選びにもらしさが』へ続く

AERA 2019年12月30日号-2020年1月6日合併号より抜粋

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