「埋葬記録はあるが、チェックが杜撰(ずさん)ということでしょう。もちろん、現地の村長らに話を聞いたうえで収集しているのですが、彼らももう何代も代替わりしているので情報の精度も高くない。ロシアでは墓地の上に墓地を作るようなこともあるので、ロシア人の墓を掘り起こして収集してしまった蓋然(がいぜん)性が高いと思います」

 と、毎日新聞記者、栗原俊雄さん(52)は語る。栗原さんには、『シベリア抑留 最後の帰還者 家族をつないだ52通のハガキ』などシベリア抑留や遺骨収集、戦争に関する著書が多数ある。

 栗原さんはため息交じりにこう続ける。

「597体の中でも、疑わしさに濃淡はあるでしょう。歯と四肢骨なども残っているので、鑑定はできるはずですが、過去にも同様のケースがたくさんあったと思います。それをどこまで検証するつもりがあるのか。現地に専門職員を派遣せず、日本人以外の遺骨の多数混入を招いたフィリピンで懲りたのか、最近は人類学者を収集現場に派遣して体制強化を図っているというけれど、スキーム自体を見直さないといつまでも同じことを繰り返すでしょう。ロシアなら軍の研究施設などを借りてDNA鑑定すれば、アジア系かそうでないかぐらい確認できるのに」

(編集部・大平誠)

AERA 2019年12月9日号