トランプ大統領が殺害したと発表した、「イスラム国」(IS)の最高指導者バグダディ容疑者。「史上最悪のテロ組織」を率いた男とはどんな人物か。また、今後の課題は何か。AERA 2019年11月11日号に掲載された記事を紹介する。
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トランプ米大統領は10月27日、過激派組織「イスラム国」(IS)の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者が、シリア北西部で米軍に追い詰められ自殺したと発表した。
「これでイスラム過激派の脅威が終わったわけではない。しかしこれは米国の対テロ戦略の重要な勝利」
とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は報じた。
トランプ大統領は、日曜日の午前という異例の時間に記者会見を開き、同容疑者の最期を「すすり泣き、泣き叫び」と詳細に語った。
「彼は胸が悪くなるような邪悪な男だったが、もはや存在しない」
多くの米国民にとって、今回のISトップの自殺は、オバマ前大統領が2011年に行った故オサマ・ビンラディンの急襲・殺害を思い起こさせるだろう。米国民が、もっとも恐れるテロを大統領が断つ道筋をつけ、記者会見する。人々が、ホッとする瞬間だ。トランプ大統領にとって、就任1千日あまりで、最大の功績ともいえる。
「胸が悪くなるような」というバグダディ容疑者とはどんな人物なのか。
今回の米軍急襲作戦の名は、15年に死亡が確認された、米国人女性ケイラ・ミューラーさん(当時26)に敬意を表してつけたとホワイトハウスは発表した。AFP通信によると、国際人道支援団体「デンマーク難民評議会」で働いていたミューラーさんは、13年にシリア北部で病院を訪問中に拉致され、バグダディ容疑者に引き渡された。ミューラーさんは、同容疑者から繰り返し性的暴行を受けていたとみられている。ISは、ミューラーさんが、米軍の有志連合による空爆で15年に死亡したとしているが、死亡の状況や遺体の行方は不明だ。