「コンビニ百里の道をゆく」は、50歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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幼い頃、親や先生に褒められてうれしくなったことはありませんか。私は今でも褒められると素直にうれしく、照れ隠し気味に頬が緩みます。
ローソンでは、今年の4月から全社朝礼で「社長賞」を発表しています。各部署からきた候補の中から選んでいて、10月までに22件表彰しました。
社長賞の導入にはいくつか理由があります。一つは、目立ちやすい営業系だけではなく、コーポレートやサポート系にもスポットライトを当てたいと思ったこと。
たとえば、人気商品が生まれる背景には、品質管理、法務、広報、工場、ロジスティクス、そして何よりも売り場があります。どこかで起こったイノベーションが店頭に花を咲かせることもある。
当たり前ですが、花だけでなく、葉っぱや茎や根っこや土もしっかり見ていきたい。よってみんなに声をあげてもらって、なかなか表に出てこない頑張り、時には「良い失敗」も表彰します。なぜなら“F.A.I.L means First Attempt In Learning”(失敗は学びの第一歩)だからです。インドのアブドゥル・カラーム元大統領の言葉で、先日出張したシリコンバレーの小学校でも掲示されていると耳にしました。
そして二つ目の理由に、コンビニ業界を取り巻く環境の変化がありました。
変化に対応していくためには、現場で起こっている様々なことをなんでも発信し、事実を捉え、仮説・実行・検証をスピードに乗って回し続けていかなければなりません。思ったことや感じたことを発信することで、時代の変化の兆しを捉え、加盟店のみなさんと共にお客様のニーズを掴むことができる。
褒める文化が風通しの良い組織への一助になると思っています。そして社会の変化を捉え、加盟店のみなさんと共に挑戦を続けていく。そんなローソンでありたいと思っています。
※AERA 2019年11月11日号