東京大学 総合研究博物館勤務 松原始さん(50)/1969年生まれ。京都大学理学部卒。同大学院理学研究科博士課程修了。専門は動物行動学。著書に『カラスの教科書』など多数。現在の勤め先は東京大学と日本郵便が協働で運営する博物館「インターメディアテク」。オフィスの窓から丸の内のカラスたちを観察するのも日課(撮影/岡田晃奈)
東京大学 総合研究博物館勤務 松原始さん(50)/1969年生まれ。京都大学理学部卒。同大学院理学研究科博士課程修了。専門は動物行動学。著書に『カラスの教科書』など多数。現在の勤め先は東京大学と日本郵便が協働で運営する博物館「インターメディアテク」。オフィスの窓から丸の内のカラスたちを観察するのも日課(撮影/岡田晃奈)
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森林総合研究所 主任研究員 川上和人さん(46)/1973年生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科を中退して、森林総合研究所(茨城県)の研究員に。著書に『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』など。写真は勤め先の森林総研の標本室で。研究者たちが100年以上かけて集めてきた標本のなかには、川上さんの研究に関わる鳥「メグロ」のものも並んでいた(撮影/写真部・小黒冴夏)
森林総合研究所 主任研究員 川上和人さん(46)/1973年生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科を中退して、森林総合研究所(茨城県)の研究員に。著書に『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』など。写真は勤め先の森林総研の標本室で。研究者たちが100年以上かけて集めてきた標本のなかには、川上さんの研究に関わる鳥「メグロ」のものも並んでいた(撮影/写真部・小黒冴夏)

 どんなジャンルでも研究者たちの探究心と情熱で切り拓かれてきた。もちろんマイナー分野でもそれは同じだ。ライター・福光恵氏が鳥類学者の2人から知られざる研究の世界をレポートした。AERA 2019年10月14日号から。

【写真】森林総合研究所の主任研究員、川上和人さん

*  *  *

「この木のこのへんに、黒い巣があるのが見えますよね?」

 東京大学総合研究博物館に勤務し、カラスの生態、行動、進化などを研究テーマとしている松原始さん(50)は、そう言って画面の中の森の写真を指さした。

 はい。素人には、まーったく見えません。実はこれがカラスの巣らしい。専門家になると、電車のなかから遠目に森を眺めつつ、カラスの巣を確認できるようになるそうだ。

 松原さんも、研究対象と運命で引き合わされた「赤い糸派」のひとりだ。カラスに興味を持ったのは、小学校に入学する前。カアカアと鳴くカラスに、試しにカアカアと口まねをしてみたところ、カアカアと返事があったのがきっかけだった。

 今でこそ、カラスだけの研究をしている鳥類学者はいるが、松原さんが研究者になった当時は、ほかにライバルがいないブルーオーシャン状態。そんな独壇場で、これまでさまざまな発見もした。例えば、森にすむハシブトカラスの生態。

「街にすむカラスのことはよく知られていますが、実はもともと森にもカラスはすんでいて、それも針葉樹の植林に多くすんでいることを発見しました」

 今も週末は全国の森に出かけ、カラスを観察するのが主たる活動内容。とはいえ、先輩研究者もいないマイナージャンル。最初は森にカラスの巣を見つけることさえ、簡単ではなかったという。

「森には刺激がないので、カラスはいたって静かなんです。諦めて帰ろうとすると、後ろで静かに立っていることもあった(笑)。森に足を運び、3年目にようやく巣を見つけました」

 研究費用は、旅費、カメラ、ドローンなど。クラウドファンディングで「約7万円」集めたことはあるが、基本は「自腹」でまかなう。

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