内田也哉子(うちだ・ややこ)/1976年生まれ、文筆家、翻訳家。音楽ユニットsighboatのメンバー。近著に『9月1日 母からのバトン』(ポプラ社)。『この世を生き切る醍醐味』(朝日新書)に也哉子さんのインタビューも収められている(撮影/写真部・加藤夏子)
内田也哉子(うちだ・ややこ)/1976年生まれ、文筆家、翻訳家。音楽ユニットsighboatのメンバー。近著に『9月1日 母からのバトン』(ポプラ社)。『この世を生き切る醍醐味』(朝日新書)に也哉子さんのインタビューも収められている(撮影/写真部・加藤夏子)

 ものを持たない主義を通した樹木希林さん。娘の内田也哉子さんがそのエピソードや真意を語った。AERA 2019年10月14日号に掲載された記事を紹介する。

【樹木希林さん AERAに明かした「ヌードより恥ずかしい姿」で見せた女優魂】

*  *  *

 子どもの頃、母に服を買ってもらったことはありませんでした。買ってもらったのは中学に上がるとき一度だけ。冠婚葬祭用の服が必要よね、と。母はもったいない精神の人でしたから、知り合いの女優さんたちがワンシーズンしか着ないような服があるともらってきて、それを私が着ていました。

 服を好きに買うようになったのは17歳のときから。15歳のときいまのダンナさん(俳優の本木雅弘)に出会い、何かのお祝いに買ってくれました。彼は服がとても好きで、アイドル時代もインタビューに合わせ、必要となれば自分で店に借りに行き、用意していたと言います。海外でファッションの修業をする夢も持っていたそうです。

 そんな洋服好きの男性と、全く買ったことのない女性が出会ったのです。初めて連れて行ってくれたのは、コム・デ・ギャルソンの本店でした。メンズのミリタリー的なオールインワンを選ぶと「似合う」と言ってくれ、いまもその服は大事に着ています。

 それにしても、ダンナさんは17歳のガールフレンドにフェミニンな服とかバッグをプレゼントするわけでもなく、私自身もなんの違和感も覚えませんでした。おこがましいですが、コム・デ・ギャルソンの服を見たときに何か母に通ずるものを感じたのです。

次のページ