キャリアは前に進むだけがすべてはない。一見、遠回りやリセットしたように見ても、その経験が未来につながることがある。AERA 2019年9月30日号の特集「転職の新常識」では、そうしたしゃがんで力をため込みジャンプする「√(ルート)」の形のようなキャリアを築いてきた人に話を聞いた。
【図】4年間のブランクがバネに!? 松井小麦さんの「ルート型」キャリアはこちら
* * *
ぽっかり空いたキャリアの「ブランク」をばねに、ルート型に登り続けてきた人もいる。
松井小麦さん(36)は、新卒でソニーに入社し、量販店営業や人事総務などを3年務めた後、家族の仕事の都合で米サンディエゴへ。キャリアは中断する形となったが、結果としてその4年間が大きな転機になる。
小さい頃からテニスに打ち込み、高校ではインターハイで準優勝するほどの選手だった松井さん。筑波大学へ入学し、そのまま新卒で就職。
「それまで周りにいたのは、私と同じようなルートを歩いてきた人ばかりでした。でもアメリカでは、自分でお金を貯めて留学にきた人、駐在についてきながら仕事を見つけて働いている人、いろんな人がいて、自分で努力すればいろんな可能性があるんだなと実感しました」
そこからはチャレンジの日々。英語学校に通ったり、マーケティングの授業を取ったり。同世代の留学生から、ひと回り上の駐妻コミュニティーの仲間まで多様な人との出会いが価値観を変えた。だが、帰国後、再就職しようとしたが、苦労した。
「職務経験は3年だけ。特別なスキルもないし、4年ブランクがあった上での女性の再就職はなかなか難しかった。派遣で受付や事務の仕事をしようと探していました」
そんな矢先、ビジネスSNS「ウォンテッドリー」に登録したのがきっかけで、同社で働くことに。メンバーのプロフェッショナルな意識と働き方に感化された。そんなとき、人気パズルゲーム「キャンディークラッシュ」を運営するKING Japanの代表に、日本支社の立ち上げに伴いPRをやらないかと声をかけられた。未経験ながら「向いていると思う」という代表の言葉を信じて入社。はじめは手探りだったが、PRはそもそも型があってないようなもの。自分なりに作り上げていくことが楽しくなった。