ノック式ボールペンとは、カチッと片手で押すだけでボールペンの芯が本体から出て、もう一度押すと出ていた芯が中にひっこむ仕組みになっているボールペンのことです。
このボールペンが道具として正しく機能するためには、芯の出し入れの機構が重要になります。
勝手に芯が出てしまっては周りのものをインクで汚してしまいますし、書いている最中に芯が引っ込んでしまうと安定して書き続けることができません。
子どもたちはこれまであまり意識することのなかったボールペンの仕組みを興味深そうに調べ始めました。
「外側のゴムは滑り止めのためにあるんやね」
「バネがあるから、勝手に芯が出てこうへんねんな」
分解してみることで、それぞれの部品が何の役目を果たしているのか想像を働かせます。
そして、また元に戻して動作を確認することで、自分の予想が当たっていたかを確かめます。
ボールペンと向き合う彼らの表情は真剣そのものです。
ただ、肝心の芯の出し入れの機構がなかなか解明できません。
「音がカチッと鳴って、この部分が回転してるんはわかったけど……」
「そもそも、なんで回転する必要があるんやろ?」
何度も芯の出し入れを繰り返し、ボールペンの動きをじっくり確認します。
「あっ、俺わかったで!!!」
どうやら、クラス最年長のKくん(小学4年生)はその仕組みを完全に理解したようです。
図に書き起こしながら、クラスメートに説明する彼の表情は充実感に満ちあふれていました。
「こんなすごい仕組みのものが100円ショップで売られてるんやね!」
Kくんの説明を聞き終わり、クラス唯一の女の子であるMちゃんが思わず驚きの声をあげました。
身近な道具にも様々な工夫が施されていることを知った子どもたち。メカエンジニアとしての第一歩を踏み出しました。
※AERAオンライン限定記事
○山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。