RJPには三つの効果があると言われる。一つ目は「ワクチン効果」。予防接種と同じく、ネガティブな情報も事前に知らせておくことで、現実に対する抵抗力がつく効果だ。早い段階で求職者自身がネガ情報を知れば、覚悟が決まった人だけがエントリーしてくる「自己選抜効果」も期待できる。ほかに「誠実な企業だ」と認識した求職者から、課題解決に自らコミットしようという姿勢を引き出す「コミットメント効果」もある。
米国で1970年代から提唱されてきたRJP理論が、いま改めて注目されることになったのは、SNSや口コミの普及で企業の嘘が簡単にバレる時代になったことが大きい。特に「オープンワーク(旧Vorkers)」や「カイシャの評判」など転職者を対象に作られた企業の口コミサイトを、いまや新卒の学生もチェックする。当然ネガティブな口コミに企業は神経質にならざるを得ない。だが、逆にうまく活用してリアルな情報を出せれば、採用力を上げることも可能だ。
たとえば「ITエンジニアの労働環境を変える」をミッションに掲げるエンジニア派遣会社、エージェントグロー。同社の河井智也社長は、週に1度はエン・ジャパンが運営する口コミサイト「カイシャの評判」をチェックしている。6月初めにも、いくつかの気になる口コミを見つけた。給与や残業、都心の一等地への本社移転などに対して不信感が綴られていた。
そこで即座に河井さんは、「カイシャの評判」と連携する「エン転職」のサイトにコメントを書き込んだ。給与や残業代については詳しい計算式やルールを説明。情報公開の不備に関する指摘には「改善の手続きをとりました。ご指摘ありがとうございます」と投稿した。
さらに本社移転については「売り上げに占める地代家賃の割合(地代家賃率)」のデータを示しながらこう書いた。
「創業時に比べて経営基盤は強固なものとなり、売上高も順調に増加しています。その結果、地代家賃率は創業時よりも逆に低くなっており『ITエンジニアの労働環境を変える』というミッション実現に向けての取り組みに支障をきたすとは考えにくいのではないでしょうか」