痛ましい事件は、いまも後を絶たない。なぜ事件は繰り返されるのか、私たちはいま一度、考え直す必要があるのかもしれない。
「子どもが弱くてすぐに死んでしまうこともある。子育てをしている私の友だちにも、ついそれを忘れてそっち側に行っちゃうかもって思ったという人も多いんです。子どもを死なせてしまうような人たちが『自分たちと違う』『人間じゃない』と言うのは簡単ですが、もしかしたら何かのはずみでそっちに行ってしまうという可能性はいつもある。そう考え、危機は誰の隣にもあると意識することも必要なのではないかなと思います」
(編集部・三島恵美子)
■東京堂書店の竹田学さんオススメの一冊
ヨシタケシンスケさんのイラストと荻上チキさんによるエッセー『みらいめがね それでは息がつまるので』は、人がもっと自由に生きていけることを思い出させてくれる1冊だ。東京堂書店の竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。
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本書は旺盛な評論活動を行う荻上チキのライフストーリーにヨシタケシンスケのイラストが絶妙に呼応してできた稀有なエッセーである。荻上はアルバイトやゲーム、いじめ、母との関係など自らの過去を振り返り、自身の好奇心や生きづらさを現在のジェンダー差別や難民、歴史認識問題など広く社会の問題へも開いていく。自らのめがね(価値観、規範意識など)を問い直しライフストーリーを語り直す試みは、社会の規範や価値観の問い直しにつながる。ヨシタケのイラストが時に涙を微笑に変えてユーモアとともにその問いを深めてくれる。
読後、本書から「多様萌え」で「排除嫌い」を自認する荻上の、誰もが笑いあえる社会を強く望む意思を感じ、私たちはもっと自由に生きていける、という思いを強くした。広く読者の心に沁みてほしい本だ。
※AERA 2019年7月15日号