頭木弘樹さんによる『絶望書店 夢をあきらめた9人が出会った物語』は、古今東西から「夢のあきらめ方」にまつわる物語を集めたアンソロジーだ。頭木さんに、同著に込めた思いを聞いた。
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アンソロジーの愉しみ、というものがある。バラバラに存在している個々の作品が、あるテーマなり選者の下に集められると、旧知の短編なども今までと違う発見と共に読むことができたりする。
「興味のなかったものをお試しで読んでもらうことがアンソロジーの役目だと考えています。しかし、ほとんどの人が知らない作品ばかり集めても読んでもらえないし、有名な作品だけでもつまらない。バランスが難しいです」
数々のアンソロジーを作ってきた頭木弘樹さんには、心がけていることが二つある。
「一つは海外文学作品を意識的に入れること。海外文学の読者は年々減っていると言われますが、すぐれた作品がたくさんあるのにもったいない話です。もう一つは古典。古典はとっつきにくいですが、長い時代を経て生き残っているわけで、そこには何か普遍的な強さがあるはずです」
『絶望書店』は「夢のあきらめ方」をめぐる物語を集めた本だ。頭木さん自身が選んだ作品もあるが、多くは頭木さんが信頼する「偏った読書傾向」の人が推薦した作品で構成されている。
「さまざまな分野の方に選んでもらったのですが、難航しました。“あの人が選んだんだから間違いない”と無条件に載せるのは嫌なんです。自分では絶対にたどり着かないものを持ってきてもらい、なおかつ私が心から良いと思えるものだけを載せたい。ある方なんて、20作品くらい却下しました。わがままな企画ですよね(笑)」
絶望名言、絶望図書館、絶望読書、そして絶望書店。すべて頭木さんの作品タイトルだ。
「絶望している人に読んでほしいので、『絶望』が目印になっています。でも、絶望している人は絶望という言葉を嫌がるから、手に取っていただくまでがなかなか……」