難病で13年間の闘病生活を送った頭木さんにとって、支えになったのは励ます言葉ではなく、絶望に寄り添う言葉だった。悟りきった言葉でなく、絶望を絶望のままに書きながらも優しい、そんなような本がこの世に一つだけある。
「文学」だ。
「個人の壮絶な闘病記などは、私にはつらすぎて読めません。しかし文学には普遍性があるから、暗い物語を暗い気持ちのまま読み終えることができて、それが良いんです。倒れた人を立ち上がらせる杖としての本ではなく、倒れたままでいいから、その時の枕になるような本をこれからも編んでいきたいですね」
(ライター・北條一浩)
■書店員さんオススメの一冊
『おさんぽBINGO たのしいおさんぽ図鑑』は、「身近なもの」を楽しむきっかけを与えてくれる一冊だ。オリオン書房ルミネ立川店の田邊水玲さんは、同著の魅力を次のように寄せる。
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病弱だった息子たちの保育園時代を思い出すと、いまだに色んな思いがこみ上げてきます。このころはいかに平穏な月曜日を迎えられるかが最重要課題。遠出するよりも近所の公園や公共施設で、子どもの生活リズムを保つことばかり考えてしまう不器用な母親でした。
同じように余裕のない日々を過ごす親御さんの強い味方が本書です。紹介されている草花や自動販売機などは想像通りですが、中にはちょっと変わりダネもあってクスリと笑ってしまいます。目的地までの道のりに思わぬ奥行きが生まれ、まわりを観察する習慣も身につきそうです。
先日、息子から出た思い出話に思わず目が潤みました。通園途中に見た犬や頭上に降り注ぐ桜吹雪がいかに楽しかったかをとても懐かしそうに話してくれました。子どもの逞しさに私が救われました。
※AERA 2019年5月13日号