「良きにつけ悪しきにつけ話題になるのは『気になる』存在です。本作品はそんな『気になる』存在・埼玉を描いたフィクションですが、本当の埼玉は魅力がいっぱいです。多くの方に本当の埼玉を知って、訪れて、楽しんでいただきたいと思います」
県の観光課も歓迎する。
「最終的には埼玉を褒め、県民の郷土愛を高める作品になっているとの印象。『逆転の発想』で、多くの方に埼玉県に関心をもってもらうチャンスと捉えています」
鷺谷さんによると、「埼玉ディス」に対する県民の反応には、世代間格差があるという。ふりかえれば1981年、さいたまんぞうのコミックソング「なぜか埼玉」が話題となり、その後タモリによって「ダサイタマ」という言葉が全国的に流布すると、県議会でも議題となるほどの激震が埼玉全土に走った。その波をもろに被ったのは、当時多感な年ごろだったバブル世代。東京で働き東京で遊び、ほぼ都民のような気持ちでいたところに浴びせられた痛烈な一撃。バブル世代の県民のトラウマは根深く、いまだに過敏に反応する傾向があるという。
その後も「都道府県出身者による郷土愛(愛着度)ランキング最下位」「女性の平均バストサイズが全国で唯一Aカップ」など残念な話題は増えていったが、「ダサイタマ」に怒り、葛藤した県民は、長い苦悩の時を経て現在、当時の県民とはまるで違うアイデンティティーを確立したという。
「郷土を愛する誇り高い県民になるかと思いきや、なぜかディスられても平気で、なんならもっとやれと焚きつける県民にアップデートされました。いわば、埼玉県民2.0です」(鷺谷さん)
生まれた時から地元がディスられていることがデフォルト。地元がディスられていない人生を知らない。むしろそれを達観して受け止め、ネタとして面白がる世代が現れているのだ。
「住んでみればこれほど住みやすい所もありません。県民はよさを十分にわかっている。それをあまり口にしないのは、共感されないと思っているからです」(同)
本誌は2月上旬に、AERAネット会員を中心に埼玉に関するアンケートを実施した。埼玉の良さとして挙がったのが、やはり便利さ、住みやすさだ。