竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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ローソンの倫理綱領は、社員必携の小冊子にも書かれています
ローソンの倫理綱領は、社員必携の小冊子にも書かれています

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 組織にとって、コンプライアンスリスクの管理は大きな課題です。昨年も、大企業や大学のガバナンスやコンプライアンスが問われる問題が発生しました。

 ガバナンスを利かせ、コンプライアンスを徹底しているつもりでも、社会の変化は、時に企業の常識を置き去りにしていきます。

 社会の目は年々、非常に厳しくなっています。また、スマホが行き渡り、一億総メディア時代となったいま、私たちのコンプライアンス意識を何段階も上げていく必要があります。

 このような時代だからこそ、日々、「自分の常識は社会とずれていないか」と自問自答することが大切です。そして、社外取締役や監査役なども含めて、組織内部にも「常識と照らし合わせる目」を置いておく。そうすれば、もし会社が暴走しそうになっても、組織の仕組みとして阻止できる。

 私がそう思い至ったのは、三菱商事の広報部に在籍していた時です。会社の常識は、時に社会の常識とずれることがあります。組織の「中」を大切にするあまり、「外」の社会に目を向けることが少なくなるからです。それを社会の常識に引き戻していくのが広報機関の役割です。今後、その役割はますます大きくなっていくと思います。

 社長のもとにはさまざまな情報や意見が集約されます。その中には「耳が痛い」ものもあり、ともするとスルーしたくなるのが人間です。しかしそういう時ほど、「耳が痛い」と思ってしまうのは、自分が世間の常識とずれているからではないかと必ず自問すべきです。この姿勢があれば、「聞く耳」を持って、正常な判断ができます。

 その正常な判断は、健全な精神と健康な肉体があってこそ。加盟店やクルーのみなさん、ローソンで働く全社員の心身が健康であることが、正しい判断の源であり、コンプライアンスが徹底された組織であり続けられる秘訣だと考えています。私も常に自問自答しています。

AERA 2019年1月21日号