義足をはき仁王立ちする乙武さんの姿には、多くの反響が寄せられた。実は、靴をはいた義足はこの日が初体験だった(写真:本人提供)
義足をはき仁王立ちする乙武さんの姿には、多くの反響が寄せられた。実は、靴をはいた義足はこの日が初体験だった(写真:本人提供)
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【作家】乙武洋匡(おとたけ・ひろただ、左)さん:先天性四肢切断での生活体験をつづった著作『五体不満足』(1998年、講談社)がベストセラーに。今年10月には車いすのホストを主人公にした小説『車輪の上』(講談社)を出版した/【ソニーコンピュータサイエンス研究所 リサーチャー Xiborg社CEO】遠藤謙(えんどう・けん、右)さん:ロボット義足や競技用義足の開発を手がける。気鋭のエンジニアとして早くから注目され、世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダーズ」などにも選出された(撮影/写真部・小原雄輝)
【作家】乙武洋匡(おとたけ・ひろただ、左)さん:先天性四肢切断での生活体験をつづった著作『五体不満足』(1998年、講談社)がベストセラーに。今年10月には車いすのホストを主人公にした小説『車輪の上』(講談社)を出版した/【ソニーコンピュータサイエンス研究所 リサーチャー Xiborg社CEO】遠藤謙(えんどう・けん、右)さん:ロボット義足や競技用義足の開発を手がける。気鋭のエンジニアとして早くから注目され、世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダーズ」などにも選出された(撮影/写真部・小原雄輝)
技術チームが開発を進める義足。デザインにも工夫が凝らされ、「あり得ない形状だが、不自然ではない立ち姿」(遠藤さん)を実現する(撮影/写真部・小原雄輝)
技術チームが開発を進める義足。デザインにも工夫が凝らされ、「あり得ない形状だが、不自然ではない立ち姿」(遠藤さん)を実現する(撮影/写真部・小原雄輝)

 作家の乙武洋匡さんが、義足をはいて歩くことに挑戦する「OTOTAKE PROJECT」が始動した。義足の開発を主導するのはソニーコンピュータサイエンス研究所の遠藤謙さんだ。2人に、プロジェクトへの思いを聞いた。

*  *  *

――乙武さんが、歩くことに挑んでいる。この事実は大きな反響を呼んだ。チャレンジの様子は11月18日に放送されたフジテレビ系の番組「ワイドナショー」でも紹介され、スタジオで仁王立ちも披露。お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さんとの肩組みも話題になった。

 その半面、プロジェクトスタートから約1年、遠藤さんはまだ「3段階のうちの1段階目を上り始めたところ」だと話す。

乙武:「感動した」とか、「衝撃を受けた」という言葉を多くいただきました。特に母親など、近しい人の喜びようは少し想定外でしたね。これまで、結構大きな仕事や、世間に評価していただけるような仕事をしたときでも、これほど喜ばれた記憶はないくらいです。

遠藤:マネジャーさんも、「わが子が歩いたようだ」とおっしゃっていましたね。一方で、僕にとっては、このプロジェクトはアドベンチャーなんです。難しいチャレンジがあって、それを乙武さんと一緒にクリアしていく。だから乙武さんが歩く姿に感動はしていなくて、実はワクワクしてるんです。

乙武:あ、それ僕も同じ気持ちですね。「歩く」という多くの人間が自然に持っている機能を乙武が取り戻そうとしている、その姿に感動してくれる人が多いんだと思います。でも、僕は歩いた経験がないから、これはリハビリというよりも、新しいチャレンジ。ひとつひとつ、難題をどうクリアしてやろうかって楽しんでますね。トレーニングはめっちゃきついんだけど。

遠藤:最終的に、乙武さんが街を歩いていても気づかれない、話題にもならないくらいになったら、このプロジェクトは完成ですね。

乙武:そういう意味では、現時点ではあの義足のポテンシャルの5割も発揮できていないですね。あれはモーターのひざがついていて曲げ伸ばしができるのが肝なんですが、今の段階ではほとんどそれを作動させていないから……。

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