マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
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イラスト:大嶋奈都子
イラスト:大嶋奈都子

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

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「かつて“画一”が好きだった、でも……」という話を書きたい。

 我々は、どんな種類の店だろうが1杯目は「とりあえずビール」から入ってしまいがちだ。しかしである、賢明なアエラ読者にはあえて提言しておく。

「寿司屋で“とりあえずビール”はやめておけ!」

 口調が乱暴で申し訳ない。しかし、今、この記事を片手にビールを頼もうとしている同輩がいるかと思うと堪らなかったのだ。

 ビールとナマモノは合わない。酒を飲むようになり30年たってようやく気が付いた。パターン化された行動様式だったので、どこでも1杯目はビールにしていたが、寿司にも、ビールにも失礼なことをしていたような気がする。釣りで言えば、全く引っかからないポイントにずっと釣り糸を垂らしていたようなものじゃないか。

 われながら驚くのは、こういう染み付いた行動様式に対する己の無批判ぶりだ。思えば漠然とした違和感のようなものはあったが、「画一的」なやり方は楽だったのでそうしていた。世間はほとんど「習慣」と「面倒くさい」で出来ている。またそれを支えてきたのが「大量生産」という思想だ。学校なんてまさにそうで、決まった時間に学校にやってきて、決まった型の授業を受けて、同じテストを受けて、だいたい決まった年数で卒業して行く。その中で「個性」を育めという。否、はっきり言うが私が学んだのは「個性」ではなく「画一」や「均質」であり、おかげで、今でもそういった大量生産的なシステムと、商品が大好きだったりするのだ。

 ところが、「ビールと寿司は合わない」と感じてしまったが最後、そこからは自分に合う「異例」を探さなくてはいけない。皆が「とりあえずビール!」と言っているそばで、「いや、私は八海山で」と小さな声で主張をするのだ。なんとも寂しい。

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