それだけに「民主党が下院で多数となれば大統領の弾劾(だんがい)が始まる」などと危機感をあおるトランプ大統領による共和党支持の訴えが、ここに来て支持者たちを奮起させている。中米諸国から米国を目指し押し寄せる数千人規模の移民集団の発生や、米国を弱体化させた象徴とトランプ大統領が批判するオバマ前大統領が民主党の選挙運動の先頭に立ったことなどもトランプ支持者を強く刺激した。
ウォールストリート・ジャーナルとNBCニュースが10月に実施した世論調査では、トランプ大統領の支持率は47%。この1カ月で3ポイント上昇し、両社による調査では過去最高となった。不支持率は49%で9月から3ポイント減少した。共和党に「好印象がある」と答えたのは、この1カ月で3ポイント増の36%、民主党は1カ月で3ポイント減の35%だった。ともに3ポイントの増減が共和党陣営の巻き返しを暗示している。
16年の大統領選で、米メディアはこぞってヒラリー氏の勝利を予測する報道を開票作業が始まるまで続け、両党支持者から信頼を失った。トランプ大統領のフェイクニュース批判に力を与え、社会分断を助長する一プレーヤーに仕立て上げられた。CIA元長官宛ての爆発物がCNNに届けられたことが、それを物語る。それだけに今回、各メディアは慎重だ。情勢予測はあくまでも「現時点」だと強調し、「この2週間でどんでん返しもありえる」(CNN)と注釈をつける。異常なまでに注目を集める中間選挙は、社会分断をめぐりメディアの存在意義をかけた信頼回復の選挙にもなる。(編集部・山本大輔)
※AERA 2018年11月5日号