東京海上日動の担当者は、「これまであった弁護士保険だけではなく、メンタルケアなどにつながる補償を提供することで、いじめなどのトラブルから包括的にお客様を守れるようになればいいと思います」と話す。


●いじめ保険に他社が参入していく可能性大

 
 こうした保険は、今後業界で広がっていくのだろうか。
 
 子どものいじめに備える保険では、法的トラブルでの弁護士費用などを補償する商品を販売する保険会社「エール少額短期保険」が2019年に出したものが国内で初めてとされる。
 
 同社の担当者によると、提供開始直後の資料請求数は、従来商品の3倍超に上ったという。同保険は弁護士への無料相談ができ、いじめの認定に必要な証拠などを集めるためのアドバイスが受けられる。
 
 保険業界に50年以上携わっているベテランアナリストの山野井良民氏が、保険業界の動向についてこう解説する。
 
「弁護士の助言や臨床心理士のカウンセリングを含めて補償する商品を扱う会社は、今後増えるのではないでしょうか。同種のトラブル対策の保険としては、外資系のAIG損保もすでに出しています」
 
 保険会社が提携している弁護士の助言が得られる商品は、弁護士のアドバイスが容易に受けられるため需要が高く、多くの会社が特約で引き受けているという。
 
「トラブル対策の保険としては一定の効果があるため人気です。これまで、離婚や近隣住民とのトラブル、セクハラなど、いくつものケースに適用されてきました」
 
 そこにいじめ関連についての特約がつくことで、保険会社としてもメリットがあるという。
 
「会社として、保険料収入(売り上げ)の面ではこのような新種保険のウェートは微々たるものです。でも、社会的責任を担う保険会社の存在価値をアピールできるメリットがあります。また、この特約をアピールすることでメインの保険に加入を促進できる効果も期待できます」
 
 教員の数も増えない現状において、いじめの認知件数が急激に減るとは考えにくく、最近ではネットトラブルも大きな社会問題となっている。

「子どもたちを取り巻くリスクに対応した商品を取り扱う会社は今後も増えていく可能性が高いでしょう」
 
(AERA dot.編集部 板垣聡旨)

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