お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。
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この夏に体験した“神秘体験”のことをここに記しておこう。
夏の初めにある音楽フェスに出演することになった私は、車で“その島”へ出向いた。
ちなみにそのフェスに出演するのは今年で2回目。前年は、電車でやってきて、ショーやって、ビール1本のみ飲んで帰った。なんとも味気のない一日だった。こんなことではダメだと思った。「楽しい」を表現する者が一番「楽しい」から遠いところにいる。
「もし来年も来られるなら家族と1泊するってのもアリですよ」
所属レーベルのKが去年言ってたのを真に受け、「今年は家族と行こう」と決断。早々に民宿を予約しておいてもらった。
今思えば、行きの道中から様子がおかしかった。高速に乗ってすぐの事、運転手のOが言うのだ。「今日は音源だけでやるんですね」。私は答えた。
「いや、いつも通りギターを弾くよ………ん?」
言った刹那、心に違和感を覚える。何かとんでもないことが起こっているような気がした。胸騒ぎは的中、そして、私は迷わずギターを取りに帰った。そう、私はギターを忘れたのである。 今回は前乗りである。1泊して、翌日にライブを行うのだ。片道5時間ほどかけようやく港に到着。さらにそこからフェリーで島へ渡る。
到着してみると、いきなりスクーターに3人乗り、しかもノーヘルのお母さんを見かける。他にも、軽トラの荷台に10人ぐらい子供らが乗っかって移動してるのも当たり前だし。なんだこの島は。フェリーの蓋が閉まった時から、時空が捻れ、パラレルワールドに入ってしまったような気分になった。
花火大会を満喫し、翌朝は船団パレードも見られた。
本番も、お客さんが楽しんでくれたようで何より。