マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
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マキタスポーツが遭遇した“神秘体験”とは(※写真はイメージ)
マキタスポーツが遭遇した“神秘体験”とは(※写真はイメージ)

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

*  *  *

 この夏に体験した“神秘体験”のことをここに記しておこう。

 夏の初めにある音楽フェスに出演することになった私は、車で“その島”へ出向いた。

 ちなみにそのフェスに出演するのは今年で2回目。前年は、電車でやってきて、ショーやって、ビール1本のみ飲んで帰った。なんとも味気のない一日だった。こんなことではダメだと思った。「楽しい」を表現する者が一番「楽しい」から遠いところにいる。

「もし来年も来られるなら家族と1泊するってのもアリですよ」

 所属レーベルのKが去年言ってたのを真に受け、「今年は家族と行こう」と決断。早々に民宿を予約しておいてもらった。

 今思えば、行きの道中から様子がおかしかった。高速に乗ってすぐの事、運転手のOが言うのだ。「今日は音源だけでやるんですね」。私は答えた。

「いや、いつも通りギターを弾くよ………ん?」

 言った刹那、心に違和感を覚える。何かとんでもないことが起こっているような気がした。胸騒ぎは的中、そして、私は迷わずギターを取りに帰った。そう、私はギターを忘れたのである。 今回は前乗りである。1泊して、翌日にライブを行うのだ。片道5時間ほどかけようやく港に到着。さらにそこからフェリーで島へ渡る。

 到着してみると、いきなりスクーターに3人乗り、しかもノーヘルのお母さんを見かける。他にも、軽トラの荷台に10人ぐらい子供らが乗っかって移動してるのも当たり前だし。なんだこの島は。フェリーの蓋が閉まった時から、時空が捻れ、パラレルワールドに入ってしまったような気分になった。

 花火大会を満喫し、翌朝は船団パレードも見られた。

 本番も、お客さんが楽しんでくれたようで何より。

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