人生100年時代とも言われる今、将来への蓄えをどう作るかは切実な課題だ。公的年金の支給開始年齢が高くなっていく中、65歳で引退、老後は年金暮らしという展望は描きにくい。働き方や老後の暮らし方によって、自ら資産形成することが求められる時代になりつつある。

 政府もそれを後押しする。2018年1月から「つみたてNISA」がスタート。17年1月の制度改正によって、iDeCoは公務員も含めた現役世代全員が利用できるように改良された。どちらも投資対象の金融商品が長期、分散投資向きの投資信託に絞られており、ビギナーでもとっつきやすいのが特徴だ。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングが今年1月に公表した「私的な資産形成に関する将来予測・政策シミュレーション分析」によると、公的年金の給付水準が低下した50年時点で、世帯主年齢85歳の世帯の48.8%で金融資産がマイナスになるという試算が出た。これは退職後も生活水準を下げずに金融資産を取り崩していった場合だが、策を講じなければ同じ未来が待っている。同調査を担当した経済政策部上席主任研究員の横山重宏さんは言う。

「老後に不安があっても、貯蓄できていない世帯が多い。平均年収500万円の世帯でも、65歳時点で貯蓄100万円未満が約20%もいる。40代半ばで危機感を抱いても、子どもの教育費や住宅ローンがかさんで、ズルズルと60歳近くまで貯蓄できなかったという人は珍しくない」

 どうすればいいのか。同調査によると、30歳から59歳まで可処分所得の約10%を資産形成に回し、65歳から74歳まで年間100万円の追加就労所得を得れば、「85歳での金融資産マイナス」は14.8%にまで減少するとしている。

「所得が高い人ほど金融への感度が高く、iDeCoやつみたてNISAへの加入率も高い。これでは、老後の生活も二極化してしまう。今の時代は『知らないから何もしない』では通用しない。政府が税制優遇を図っている今こそ、投資を始める好機だと思います」(横山さん)

(文中カタカナ名は仮名)(編集部・作田裕史)

AERA 2018年7月9日号より抜粋

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