「ウソをつくのはダメ」と子どもに諭すのは、しつけとして当然だが、頭ごなしに叱るのはNGだ。子どものウソには、心のSOSのサインが隠れている。
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「日大の監督やコーチは、ウソをつかないでほしい」「自分が選手に命令したって、正直に言ってほしい」
東京都内の小学校で5年生の担任を務める男性教諭(40)が、国語の授業で児童に自分で選んだ新聞やネット記事を発表させたときのこと。多くの子どもが日本大学アメリカンフットボール部で起きた悪質タックル問題を挙げた。
「その日の発表では(悪質タックル問題が)一番多かった。あのタックルはひどい、怖いといった子どもらしい言葉もあったが、大半は大学側のウソを指摘していた。子どもは大人のウソに敏感だし、大人が思っている以上に本質をついてくる」
子ども自身もウソをつく。だからこそ、ウソに対して多感になるのかもしれない。
「ウソはよくないことだと、学校では教えている。その一方で、子どもはウソをつくものだという認識で接しているのも確か。特に、日常的に頭ごなしに叱られている子どもがウソをつきやすいと感じている。失敗を親に知られないためにウソをついているように見える」(男性教諭)
学校や塾、家庭はもちろん、野球やサッカーなどスポーツでも、失敗が許されない。そのため、自分のミスを隠そうとする。もしくはそのことに正面から向き合えなくて、ウソをつく。
都内に住む会社員の女性(43)は、小学5年生になる長女の「ウソつきぐせ」が気になる。テストの点が悪いと「頭が痛かったから」と弁解する。水をこぼせば6歳下の弟のせいにする。高価なゲーム機がなくなったときは、一緒に遊んでいた友達に向かって「○○ちゃんに貸していた」と罪をなすりつけようとした。その子の悲しそうな表情を見て、すぐに娘本人がなくしたと気づき「また、ウソを言う! どうしてウソばかりつくの!」と怒鳴ってしまった。